アルバイト終了
特にトラブルもなく、アルバイトは契約満了を迎えた。
約一ヶ月間働いて得た収入は20万円ほど。
会社によっては初任給に満たない金額だが、フリーターの私にとってはとんでもない大金だ。
もちろん嬉しいのだが、これはあくまで一時的な収入にすぎないし、このままずっと不安定なアルバイト生活を続けていくわけにはいかない。
何よりもまず無職問題を解決することが最大の課題なのだ。
とはいえ、低調な就職活動を劇的に改善する特効薬があるわけではない。応募書類を逐一見直してアップデートしていくという地道な作業が必要になるのだろう。
ただ最近、募集要項の中に『TOEIC~点以上の方優遇』などの文言を頻繁に見かけるようになった。今更ながら、英語力がアピールポイントになると感じている。
もちろん、英語力強化の必要性は以前から認識していた。
しかし、離婚、引っ越し、アルバイトなどで年明けから英語の勉強は休業状態で、ここ最近は手つかずの状態だった。
40代無職バツイチ男、まずは自己投資
ところで、仕事と外国語の習得に関して私には持論がある。
『英語力の高い日本人』=『仕事ができる』とは思わないし、なによりもまず、書類作成やメールでキチンとした日本語を使うことが重要だと思っている。
しかし、採用側が英語力の高い人材を求めているのなら仕方ない。ここはもう一度奮起せねば。
英語は昔から得意な科目だったが、それはあくまで受験での話。あれからずいぶんと時間が経っているし、TOEICと受験英語では次元が異なっている気がする。
そして、勉強するなら長々と時間をかけずに効率的にスコアをアップさせたい。
そこで学習方法を色々と調べてみた。
すると、多くのサイトが『シャドーイング』という方法を推していることが分かった。
これはネイティブの会話を真似して発音する学習法で、聞き取れないものは発音できないものはできないという理屈から来るものだった。リーディングに効果的なようだ。
なんでも、プロの通訳もトレーニングの一環として行っているらしい。
『なるほど、確かにその理屈には一理ある』と妙に納得した私はさっそく、シャドーイングに定評のある問題集を購入することにした。
さらに、文法問題集とTOIEC単語集も併せて購入すると、お会計はしめて8,000円ほど。
痛い出費だったが、これで内定が近づくならば安いものだ。まさに自己投資だ。
シャドーイングをやってみて
帰宅後、さっそく勉強を開始した。
ところが、私のような初心者にとってシャドーイングはとんでもなく難しかった…
そもそも何を言っているのかまったく聞き取れない。聞き取れないので、発音のしようがない。
聞き取れないものは発音できないという理屈はまさにその通りだった。
ただこの教材はその点もよく考えられていて、会話のスピードを数段階落として聞くことができる。そこで、通常のスピードと遅めのスピードを繰り返してみた。
面白いもので、これを繰り返していると徐々に耳が慣れてくる。こういう地道な作業を繰り返していく必要があるのだろう。
また、実際の会話では、単語やフレーズが必ずしもスペル通りに発音されていないことに気付いた。
例えば、日本語で「やってられない」という文語表現があったとする。しかし実際の会話では「やってらんない」と発音されることが多い。それ以外にも「そんなことないよ」が「そんなことねーよ」と発音されるなど、類似のケースは他にもたくさんある。
きっと英語においても、文語と口語の違いはたくさんあるのだろう。
さらに、英語と日本語の周波数の違いもシャドーイングが難しい要因の一つとして挙げられるそうだ(諸説あり)。
日本語圏の人と英語圏の人は声の高さが違うと思うので、それはあながち間違っていないのかもしれない。
そして、シャドーイングの次は単語のお勉強。
事前に調べたところによると、単語集には学習に効率的なものとそうでないものがあるという。
ことTOEIC受験に限っては、単語を読んだときにその意味が分かればそれでOKなので、英語→日本語の思考回路が形成できればそれで十分。
そのため、そういった構成になっている単語帳を使えば効率的に学ぶことができるのだそうだ
確かにこの理屈も納得がいく。
そこで私は、見開き左のページが英語で、右のページに訳が載っているものを購入してきた。同じようなものは色々あったが、きっとどれも大差ないだろう。
大切なのは、一つのものをどれだけやり込むかということなので、自分にとって見やすいと思うものを選んでみた。
その単語帳に掲載されている単語数は1000語。しかし、その中には既に知っている単語も含まれるので、正味の数としては600~700くらいか。
受験生時代はターゲット1900を使ってスペルと意味を書き出しながら覚えていたことに比べれば、それほど苦にはならない。あの時の単語の蓄積が多少は今に活きている。
受験本番を迎えて
結局、その日から本番までは一週間くらいの時間しかなかった。
しかも、TOEICの他にも、年二回しか開催されない資格試験が一週間後に控えている。そちらの方は絶対に一発合格したいたので、勉強時間の比重はどうしてそちらにかかってしまう。
そんなこともあって、正直なところTOEICへの準備は不十分だったが、今の自分の実力を図らなければ今後の対策もたてようがない。
ここは力試しのつもりで受験してみようと決めた。
そうして迎えた試験当日。幸いなことに、会場は近隣の大学キャンパスだった。
色々な立て看板を見ながら大学構内を歩いていると、自分の学生時代を思い出す。あの頃は、40歳を過ぎた自分が無職になって離婚しているとは予想もしていなかった。
ちょっと感傷的になりながらも指定された教室に入ると、すでに多くの人が着席していた。
ザっと見渡すと、やはり若い人が多い。20代~30代の人が大半を占めていた。おそらく、就職や転職においてTOEICスコアが大きく影響することが影響しているのだろう。
そしてついに試験開始。
まずはリスニングパートから。
このパートでは、写真と合致した説明文を選択したり、一人や二人の会話について正しい選択肢をマークする。スピーカーから次々と設問文が流れてくるので、油断していると取り残されそうだ。
続いてリーディングパート。
こちらはリスニングパートとは異なり、印刷されている長文を読解するというもの。国語で言うところの現代文のような感じだろうか。
繰り返しじっくり読み込めるという点ではリスニングよりも気楽ではあるが問題数が多い。私の場合、30分ほど時間が足りなかった。
そして全部で2時間の試験が終了した。集中していたのであっという間だった。
出来としては500点ちょっとくらいか?600点は超えていないだろう。
どう転んでも今回のスコア程度ではアピール材料にはならないのだが、まずは自分のレベルを知り、実際の問題形式と雰囲気を感じられただけでも収穫だった。
試験が終わって
出来はさておき頑張ったことには変わりない。
とりあえず試験の一人打ち上げを行うため、帰路の途中、晩御飯も兼ねてラーメン屋に寄ることにした。
私が注文したのはオーソドックスな二郎系ラーメン。モヤシが山盛りのあれだ。
しかし年齢のせいか、もう大盛りラーメンを食べきれなくなってきた。それに味が濃すぎる。せっかくのチャーシューもおいしく食べられなくなってきた。
なんか悲しい…
だが、せっかく750円も払ったのだからとなんとか食べきったものの、お腹はパンパン。これ以上は何もお腹に入らない。
歩くのもしんどいくらい満腹になった私は、店の入り口に置いてあるベンチで一服することにした。
ここに座っていると、目の前を歩く家族連れが嫌でも視界に入る。それに比べて私はどうだろう。
こんな夕方、一人で大盛りラーメンと格闘して喜んでいる。その姿はあまりに情けない。早くこんな不安定な生活を脱け出したい。
前向きでいようとは考えてはいるが、ふとした瞬間にこんな思いが頭をよぎる。でもそんなときは無理矢理、負の感情を抑え込む。
それに、境遇を悲観して落ち込む自分に酔っている気もする。
そもそもこうなったのは自分の責任だ。だから自分で尻拭いをしなければいけない。
『仕事さえ決まれば、すべてが好転する』
不思議なことに、こう思うと少しだけ気が楽になる。まるで魔法の呪文のようだ。そして今後に向けて今は種を蒔いているところだと自分に言い聞かせている。
色々あるさ。
また明日も頑張っていこうと思いながら帰宅した私だった。
◆真・転職回顧録-再びの就活編 12/27へ続く
次回:40代無職中年男、資格試験を受けてみたら…
私は筆者の文才に魅了されています。
色々な意見がありますが、
筆者の思うまま感じたまま
書いてほしいです。
とても楽しみにしてます。