ついに噂のお客さんと初対面!
緊張の面持ちで会議室へ向かう私たち3人。
いよいよこれから戦いが始まる。しかもとっても後ろ向きな戦いが・・・
よく考えると、なんでリモートワークのさなかに人が密集する会議室へ行かなければならないのか。しかし、底辺契約社員サラリーマンは会社の指示に従うしかないのだ…。
それに、ここまでやってきたのだから、これでダメならしょうがない。
尻拭いはマネージャーさんにしてもらおう。
会議室に通された私たちは、案内してくれた女性から『奥の席へどうぞ』と促され、よいしょっと深々と座る。
私は天井を見上げて深呼吸した。
なんでこんなに緊張しているのだろう。
お客さんとの打ち合わせなんて今まで何十回とこなしてきたはずなのに。
ちらりとリーダーさんを見てみたら、いつもとは少し顔つきが違う。やはり緊張しているようだ。きっと、みんな私と同じ気持ちなのだろう。
元無職がセレクトした高級洋菓子、ぞんざいに扱われる。
数分してお客さんが入ってきた。
相手の担当者は50歳を少し超えたくらいの年齢に思われた。
パッと見では温和な感じを受けるが、電話で話したかぎりでは相当な頑固ものだ。
その後ろには彼の部下と見られる若手や中堅社員の姿が。
向こうは総勢4人だ。
人数で負けているが、そういう問題ではない。
というか、この会議室に7人もいる。
狭くはない部屋だし全員マスクを着けているものの、3密どころの話ではない。
しかし、前回記事で報告したように素敵なスローガンをたくさん掲示するような会社なので、『3密?それで利益が出るの?』といったくらいの認識しか持ってないのかもしれない。
私はウイルス感染にちょっとした不安を覚えながら、持参した超高級洋菓子をうやうやしく手渡したのだが、その際にどんなセリフを添えればいいのか迷ってしまった。
まず最初に思いついたのは『このたびは申し訳ありませんでした』
しかし、これはなんか違う。
これではこちらに全ての非があることを認めてしまうことになる。
そこで瞬時に思い付いたのは『この度はお騒がせしております。つまらないものですが、お召し上がりください。』
この間、1.5秒。
我ながら最も最適な選択をしたと思っている。
本当はこのお菓子、全然つまらないものじゃないのだが、そこは古来から伝わる日本の謙虚さを前面に押し出してみた。
余談だが、こういうときは『このお菓子は本当においしいので、是非お召し上がりいただきたくお持ちしました』の方が、受け取る側も気持ちいいと思う。
しかし日本では、自慢するような発言は厳に慎まなければならない。本当にバカらしい。
まあ、海外に住んだことがないから分からないけど・・・
閑話休題。
当初、こうしたお土産の受け渡しがアイスブレイクとなり、向こうも少し気を許してくれるかなと予想していた。
でも違った。
一応は『ありがとうございます』と言ってはくれたものの、それを椅子の足元にポンと置かれてしまった。
さすがにムッときた。いくら何でも床に置くなんて。
一般常識としていかがなものか。もう少しやりようがあるだろうに。
それに、嘘でもいいから美味しそうなお菓子ですねとか、少しくらい愛想よくしてほしかった。比較的規模の大きな会社なのに、その程度の社会常識なのかと非常に残念な思いがした。
話し合い
今回の話し合いでは事前に役割分担を決めていて、主として話を進めるのはリーダーさん。
それを補佐するのは田中さんと私。
具体的な段取りとしては、まず私がお土産を渡して雰囲気が少し穏やかになったところを見計らい、リーダーさんが話を切り出すということになっていた。
小学生が考えるような作戦だと思うが、大の大人が頭をひねってもこれしか思いつかなかった…私も含めて弊社の交渉術はレベルが低い…
そうした稚拙な作戦を見透かされたのかどうかは分からないが、気を許す気配が全くないという予想外の展開。
これにはリーダーさんも少しひるんでしまい、若干声がうわずっていた。
その様子を横で見ていた私は思わず笑いそうになったが、そこはなんとか堪える。
もうこうなったら余計なことは言わず、単刀直入に本題に入ったほうがよさそうだ。
この状況では、変に媚びた態度をとると事態がさらに悪化しかねない。
結局、この打ち合わせは何だったのか?
話は切り出したのは事前の打ち合わせどおり、リーダーさん。
そう思ったのも束の間、我々を制するかたちで向こうが話を切り出してきた。
『今回の件、弊社としてはとても厳しい内容です。』
単刀直入に相手から話題をぶっこんできた!
しかし、私としてはこの方がやりやすい。腹の探り合いのようなやり取りは正直、面倒くさい。
その後、リーダーさんが基本的に色々と話をしてくれて、白熱した議論が交わされた。マネージャーさんよりは頼りになる!
そして私と田中さんは持参した資料を使いながらフォローに徹する。
こちら側と相手の話の食い違いや、その根拠を資料を使いながら説明した。
でもやはり、一番重要な点については互いの見解が食い違っており、その溝が埋まることはなかった。
見解の食い違うというか、電話でのやりとりが再び繰り返されただけだ。
結局、当初予想したように、言った言わないの水掛け論が続く。
そして、『最初の説明と話が違うじゃないですか。うちが受け入れられないのはその点だけなんですよ』とのありがたいお言葉を頂戴したわけだが、そうなるとこちらにも考えがある。
それは、サービスの停止。
しかし、これは事前の社内打ち合わせで言わないことにしていた。
この伝家の宝刀を抜いてしまえば関係修復は絶望的なものになるので、それだけは避けたいとの配慮だった。こちらとしても話を穏便に終わらせたいのはヤマヤマだ。
でも、こうした状況がいつまでも続くのはどうしても避けたい。
それに担当者である私は、ストレスで胃に穴が開いてしまいそうだ。
そしてこの日の打ち合わせは2時間ほど続き、大した進展もなく終了した・・・
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次回の記事もお楽しみに!
よろしければ、こちらの記事もぜひ!
気晴らしに、こちらもどうですか?
私の転落人生はここから始まりました
Middle-manさん、
お疲れ様です。
結果を教えて頂き有難うございます。そうですね、企業として今後の関係性を大事にという事で無難な解決法で落ち着いたのでしょうね。結果論ですが、もっと早めにその様な対策を取る事は出来なかったのかとも思いますが。
私は、相手側から”諾成契約”といってきたで御社にとって有利な立場と考えたのですが。”諾成契約”なので御社と取引先企業は契約関係にあったとう事の証明になりますよね。御社が一方的にサービスを提供していたのでは無い事の証明になります。私は、契約の専門家でも何でもないので、これは単に私の考えですが、契約関係の上にサービスを受けていた事に対する対価を支払う義務を相手は負っているのではないでしょうか。一定期間中無料でのサービス提供という様な誤解があったという事なのでしょうか。どういう理由であれ、支払い義務をある一定期間果たさなかったら、通常サービス提供はストップされますよね。”諾成契約”とサービス受益者の支払い義務放棄とは別問題と考えます。
まぁ、素人の考えです。お読み頂いて有難うございます。