無職にかかってきた一本の電話
夕方、自宅でブログを書いていると電話がかかってきた。
母からだった。
正直、実家からの電話には出たくない。
仲が悪いというのではなく、私の現状を話すのがつらいからだ。しかし、出ないわけにはいかない。
重い気持ちで通話ボタンを押すと、母からの第一声は『元気でやっているか?』
『元気だよ』と返事をしたものの、その後の言葉が見つからない。
再就職活動を頑張っていた時は、『~に応募したら手応えがあった』とか『このまえ面接に行ってきた』など、両親を安心させる話ができた。
しかし今の私は、会社に属さずに個人で仕事をしていこうとしている最中だ。
にもかかわらず、それは全くうまくいっていない。収入もない。
そんなことを話すと余計に心配をかけるだけだ。
結局、電話をかけてきたのは別の用事だったが、それでもやはり終始、不肖の息子を心配していた。
方針転換
『このままではいけない』、『何とかしなければ』という思いが日増しに強くなってきている。
そんな折、転職エージェントから連絡があったのを機に、私はにわかに再就職を考え始めた。
試しにダメ元でエージェント経由で求人に応募してみた(40代無職男が転職エージェントを利用したらこうなった!を参照)。
結果は案の定、書類選考すら通ることなく門前払いだったが、これをきっかけに大きな心境にの変化があった。
それは再就職を視野に入れ始めたことだ。
そこでふと思い立ってハローワークに行ってみた。
はたして、久しぶりのハローワークにはどんな求人が待っているのだろうか?
ハローワークの個性的な人たち
私の自宅はA市とB市の境にある。
そのため、それぞれの市を管轄する二箇所のハローワークが近所にあり、どちらも自転車で10分くらいの距離だ。
無職にとっては好立地。
これまで利用していたのはA市のほうなのだが、そこには顔見知りの職員さんもいる。
一年くらいでまたこのハローワークに舞い戻ってきたと思われるのはちょっと辛い。そこで、昨日はB市のハローワークに行ってみた。
ここはA市に比べるとややこじんまりしている。
規模が小さいわりに求職者で込み合っていたので、検索機の順番待ちをしていると、窓口で相談している人の話し声が聞こえてくる。
盗み聞きするつもりはなくてもその話が自然と耳に入ってくるような状態だ。その内容はとても生々しかった。
『~で5年ほど働いているが、きついので今すぐにでも辞めたい。』
『今の倍くらいは給料が欲しい』
『週三日くらい働きたい』
大体はこんな感じの相談だった。なかには驚くくらいめちゃくちゃな人もいた。
『今はまだアルバイトだが、管理職職候補として雇ってくれるところはないか?』
『面接場所に行くまでが大変なので、選考を辞退したい。』
『朝、起きられないので、面接時間を夕方にしてほしい』
これまで何度もハローワークを利用して、その求人の質の低さは分かっているが、応募する人の質が低いのもまた事実。
採用側すれば、転職を繰り返している私も、そんな人たちとあまり変わりはないのだろう。
いざ、検索。どんな求人があるのか?
やがて私の順番が回ってきた。
隣に座っているのは、50代半ばとみられる男性で、頭髪が薄く、そのおかげで悲壮感がさらに増している。
ちなみに私も頭頂部が薄くなってきている。
冴えないおっさん二人がこうして横並びに仕事を探している姿は、見るに堪えない。
負のオーラを煮詰めたような空間がそこにある。
就職活動している学生や新社会人には、この光景をぜひ見てもらいたい。
勝利を見据えたキャリア形成をしっかりしておかないと、将来こうなってしまうといういい教材になるはずだ。
私は慣れた手つきでタッチパネルを操作して希望条件を入力する。
何千件もの検索結果がヒットするが、これで喜んではいけない。
よく見ると、同じ会社が異なる職種で何件も求人を出しているし、一年前も前から求人を出し続けているようなものもある。
そんなところは人材の回転が速く、内定が出たとしても、またすぐに辞めてしまうのがオチだ。
一時間ほどしらみつぶしに探してみたが、結局いいものは見つからなかった。
まあこんなものだろう。
さて、これからどうするか。
また、仕事を探してみるか…悩みは尽きない。
◆真・転職回顧録-再起動編 3/29へ続く
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