書類選考で華々しく散った40代無職
2件のハローワーク求人で立て続けに不採用をくらってしまった。
そこから三日が経過してショックも大分癒えてきたので、私はまた求人応募に精を出していた。
私の求人応募のモットーとして、要件を全て満たしていなくとも、経験に被る業務内容が少しでもあれば応募することである。
それでもなかなか求人が見つからない。こういうのは時期にも左右されるのだろうか。
まあ、そんなことを言っていても始まらないので、なんとかかんとか選択肢を広げて応募を繰り返す毎日だった。
流行りの職種
さて、一昔前の転職サイトと言えば、リクナビ/マイナビ/dodaといったメジャーどころぐらいだった。
しかし最近では、色々なサービスが雨後の筍のように乱立しており、それぞれに特色を持っている。
そんな中の一つに、ある業界に特化した新興サイトがある。そこは大小さまざまな規模の会社の求人が掲載されており、画面も見やすいので私は愛用していた。
ただ残念なことに、ここから応募して面接に至った会社は一つもない。しかし、お気に入りなだけに、一日一回はここを訪れている。
その日も懲りずにそのサイトで求人を探していたところ、気になるものを一つ見つけた。
募集されていた職種はマーケティングだが、実際の業務内容はそれよりももっと私の得意分野に近いものだった。
本来ならすぐに応募ボタンをポチっと押しているところだが、会社概要をよく見てみると、従業員の平均年齢は28歳。そして主業種はSNSマーケティングという分かったようでよく分からない内容。
う~ん、ちょっと二の足を踏んでしまう。
それにしても日本のIT業界には、特にマーケティング会社が異常に多い気がする。
こういう企業はお決まりのように、『日本の~をITで変えていく』とか『ITで~を変革する』などの謳い文句をスローガンとしているところが多い。
しかし、無職中年の目にはそういったスローガンが白々しく映るだけでなく、『誰もそんな大層なことをオタクに求めてないよ』と思っている。
そんなこともあって随分と応募を迷ったが、あまり好き嫌いのできる身分でもないし、思い切って応募してみることにした。
いつもの件名
そして二日後。
出先でふとスマホを見ると、件の企業からメッセージありとのプッシュ通知が!早速チェックしてみると、件名には【書類選考の結果について】との文言…
あ~、はいはい。いつものやつね。こういう件名の場合はほぼ100%、アウト!
もともと大して期待していない。それだけに書類選考落ちでもショックはそれほど大きくない。
ただそれでも、どんなお祈り文章が送られてきたのだろうと興味を惹かれて内容を見てみた。すると、そこには予想に反して面接の案内が!
『あれ?何かの間違いか?』と二度ほど宛名を見直してみたが、確かに私宛てで間違いない。
最近のマーケティング会社には冷ややかだったくせに、いざ面接の連絡があると喜んでしまう。私は非常に現金だと思う。
でも嬉しいんだからしょうがない。これで落とされたら『最近のIT企業は~』とまた毒づくつもりだ。それくらいでいいのだ!
さて、大事な作業はここからだ。志望動機など諸々頭に入れなければいけない。
しかし、自分の経験を活かすというのが志望動機の根底にあるので、キーワードを頭に入れるのはさほど苦にならない。
あとはそれらを現場でつなぎ合わせればいいだけだ。
厄介なのは、希望年収について質問されたときの受け答えだ。
色々と調べてみると、やや高めの方がよいとかダメとか、人によっていろいろと言うことが違う。どれもそれなりに合理的なので、なおさら迷う。
こんなときは自分が一番良いと思う方向性で行くべきだ。結局、私は希望年収よりやや低めを答えることにした。
以前の年収と同等かそれ以上と答えたら、きっとその時点で不採用をくらうはずだ(といっても、とりわけ多いわけではなかったのだが…)。
そんなこんなで下準備も終わり、ついに面接当日を迎えた。
決戦の地は新宿
面接場所は本社のある新宿。駅から徒歩10分ほどの一等地だ。
それにしても新宿はゴミゴミしていてどうも好きになれない。全体的に街が汚いし、ここで数回ほど飲んだことがあるが、どこもまともな店だったためしがない。
これから新宿で働くようになったら色々と大変だな、などと都合のいいことを妄想しながら歩いていると、思ったよりもスンナリと目的地に到着した。
しかしまだ一時間ほど余裕があったので、近くの喫茶店に入ることにした。
本来なら会社の近くの喫茶店に入ると面接官と鉢合わせする危険性があるが、幸いなことに私はサイトに顔写真を載せていない。お互い顔が分からない状態なのでそうした懸念はない。
安心してドトールに入り、まずはアイスコーヒーで一息つくことにした。
そしておもむろに想定問答集を取り出し、時間ギリギリまで頭にキーワードを詰め込んだ。これでできることはやり尽くした。
私は身支度を整え、準備万端で会社に向かった。
2人の面接官
この企業はオフィスを移転したばかりのようで、入り口にはたくさんのお祝いの花が飾られていた。
エントランスに置かれた真新しいソファーに座って担当者を待っていると、従業員と思われる派手目な服を着た若い女性が私の前を通りがかった。
その女性は派手な外見に似合わず、来客である私に軽く会釈してくれた。
これはなかなかできることではない。
この会社はミーハーな感じかなと思っていたが、もしかして従業員教育はシッカリしているのかもしれない。ちょっと感心した。
やがて私の名前が呼ばれ、案内された面接室で5分ほど待っていると、2人の面接官が入室してきた。
一人はビジネスカジュアルを最近風に着崩した、いかにも新宿のサラリーマンという長髪の若干チャラい感じ。
そしてもう一人は緑色のTシャツにスウェット風パンツ、前髪パッツンに両耳ピアス、大きな銀縁眼鏡という、結構奇抜な外見だ。
ここはそういう人が多い土地柄だし、流行りの服装であるのは理解できるが、人事として面接するときはもう少しちゃんとしようよというのが率直な感想だ。
聞けば、二人とも私と同じくらいの年代であることが分かった。なのにその服装って…
面接内容はというと、あまり有意義なものとは思えなかった。
その理由は、この面接官二人はあくまで人事担当であり、具体的な仕事内容にそれほど詳しいわけではなかったからだ。
そして面接の終盤になって希望年収に話題が及んだとき、スウェット風パンツの方から『middle-manさんにお出しできるのはこれくらいの金額です』と結構低めの年棒を提示された。
それにしても、言い方!
本人には特に悪気がないのかもしれないが、この言い方では『お前にはこの程度の価値しかないんだよ』と言われている気がしてならない。
TPOをわきまえた服装や話し方ができないあたり、彼はあまり社会常識がないのかもしれない。
とりあえず、いったんその金額で持ち帰りとなり、この日の結果は後日連絡ということで面接は終了した。
なんか消化不良な感じだ。それもこれもきっと、あのスウェット風パンツ男のせいだ。
そして翌日、面接不合格とのお知らせを頂戴した。
まあ、会社の顔である人事の質が良くなかったので悔しさはあまり感じなかった。ただ、自分自身、もうちょっとうまい切り返しができなかったものかとの反省点もあった。
まあ、これからだ。以前よりも面接の頻度は高くなってきた気がする。
今、確実にいい波が来ているので、なんとかこの流れに乗らなければ!
◆真・転職回顧録-再びの就活編 18/27へ続く
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