無職でも早起きしよう
8時半に起床。
その日は小雨混じりの寒い日だったので、外出するかどうか迷った。
しかし家にいてもゴロゴロするだけなので、重い腰を上げてハローワークに向かうことにした。
ちなみに、最寄りのハローワークは自宅から徒歩5分。失業保険の受給認定などもそこで行うことのできる大きな規模だ。
中に入ると20人くらいの人が既に仕事を探していた。
私もその中に混じって検索してみたが、いつもと大して変わらない検索結果が画面に表示される。
仕方なく勉強
ため息をつきながらも念のために一件一件を調べてみたものの、残念ながらやはり、応募したいと思える求人は見つからなかった。
私は失意のままハローワークを後にした。
せっかく外出したのだし、このまま家に帰るのもなんか嫌だ。
そこで、いつものドトールへ向かうことにした。目的はもちろん資格試験勉強。本番まではあと一ヶ月くらいだ。
今度受験しようとしている資格は、業界内での登竜門的な位置付けで、以前合格した資格とは内容が異なる。
もともとは新卒入社した時に取得しようと思っていたのだが、仕事の忙しさにかまけて受験すらせず、ズルズルときてしまった。
だが今は時間だけはタップリとあるので、これを機会に自己研鑽しなければもったいない。そして、なんでもいいから刺激が欲しい。
合格率は大体20%くらいだ。
数字だけを見るとそれほど難しくなさそうにみえる。しかし、かなり専門的な内容なのでノー勉だと確実に落ちる。自分ではそこそこ難易度の高いものだと認識している。
40歳を過ぎて再びチャレンジしようとしている理由は、キャリアを積んでこなかった自分の過去を振り返り、その後悔を清算するためだ。
そしてこれに合格することができれば、より上級資格も視野に入れており、この挑戦は決して無駄にはならないはずだ。
だが、これには批判的な意見もある。今更資格を目指すよりも、その時間を他のことに割いた方がよいとの考えからくるものだ。
この場合の『他のこと』とは再就職のことを指していると思うが、如何せん、それだけで一日を過ごすには時間がありすぎる。
有意義な時間を過ごすためには、就職活動しながら資格取得を目指すのが最善だと考える。
私のような男が小さな一歩を踏み出すにはこれしかないように思う。
意外な人物から突然の連絡
さて、今更言うまでもないが、資格試験にはお金がかかる。種類にもよるが、今回は受験料・参考書・問題集を合計すると20,000円ほどになる。
底辺無職中年バツイチ男にとってはかなり痛い。
参考書や問題集はフリマアプリで入手ということも考えたが、手元に届くのに時間がかかる。
ということで、勉強に必要な本はほぼ全て、近所のブックオフで調達してきた。もちろん最新版のものは手に入らないが、1~2年位の型落ちなら結構見つかる。
試験内容の大幅な改訂がなければこれで十分だ。
若干の書き込みや使用感を我慢さえすれば定価の1/10くらいで買えるのだから、まったくいい時代になった。
そして私は、かき集めてきた古本の問題集と過去問を3周ほど回した。解き方は大体頭に入ったので、後はこれを体に叩き込むまで何回も繰り返すだけだ。
演習を繰り返してきて、何となくではあるが合格までのイメージが湧いてきた。実力は確実に付いてきたように思う。
そしてドトールに向かったこの日も中古問題集と格闘していると、珍しく電話がかかってきた。
このとき時刻は16時。
電話の主は、少年スポーツ団のコーチ仲間である光岡さんからだった。年齢は50代半ばで、私の元上司にあたる人だ。
前回記事に登場した監督さんとはまた違う人物で、そもそも私がコーチになったのは、この光岡さんから誘われたからだ。
そして、無職バツイチという見るも無残な私の状況を知る数少ない一人でもある。
こんな中途半端な時間にどうしたのだろうと思いながらも電話に出てみた。
すると、出張先から直帰して早めに帰宅できそうなので、飯でも食べ行こうとの誘いだった。
食事の真相
指定されたのは、このドトールの近くにある焼き肉屋だった。
18時に現地集合して二人でお店に入った。
決して高い店ではないが、それでも焼肉となるとちょっと値が張る。4~5000円はいくかもしれない。
ただ、こういう付き合いはやむを得ないと割り切り、なるべく高いものは頼まないことにした。
それにしても牛肉は本当に久しぶり。
普段は手軽に作れるシチューばかりを自炊しており、肉は手羽元オンリー。
鶏肉は安いのでとてもありがたい。いつも軟骨までガリガリとかじっている。
やがて注文した肉がテーブルに並び、レア加減で焼いた牛肉を堪能していると光岡さんは私にこう言った。
『ちゃんと飯を食べてる?今日はお金のことを気にしなくていいから、お腹一杯、肉を食べて栄養を付けなさい!』
これまでサシ飲みに誘われるということはなかった。それだけに私はてっきり、チームの運営方針についての話かなと思っていた。
しかし今日は、お金のない私のためにご飯をご馳走してくれたのだ。
きっと、元部下でもある私のことを心配してくれていたのだろう。その優しさにちょっと泣きそうになったが、お言葉に甘えてお腹いっぱい食べさせてもらうことにした。
40代中年男が他人に飯をご馳走になって嬉しがるなんて、本当に情けない話だ。
しかしその代わり、内定が取れたあかつきには真っ先に報告して、私の勘定で飲みに行くことを心に誓った。
予想外の嬉しい誤算。アルバイトを紹介される!
感謝しながら黙々と肉を食べていると、こんな話を持ち掛けられた。
『俺の知り合いの会社でバイトでもする?』
実は、そろそろアルバイトでもしなければと思っていた矢先だったので、こんなありがたい話はない。
ただ、資格試験勉強の時間が削られることになってしまうが、生活のためにはそれも仕方ない。
そもそも他の受験生は働きながら時間を捻出して勉強しているのだ。私だってそのくらいのことはしなければいけない。
気になる仕事内容はというと、簡単な書類整理。
その会社はDMも扱っており、返送されてきた郵便物の開封と仕分け作業でアルバイトを募集しているのだそうだ。
しかしサイトなどの媒体は使っておらず、縁故のみで信用できる人を採用しているだそう。そこで私に白羽の矢が立ったというわけだ。
時給は1500円。期間は二ヶ月。なかなかの好条件だったので私はその話に飛びついた。
すると、その場ですぐに先方に電話してくれた。
単純作業だが肩慣らしにはちょうどいいはずだ。
そして形だけではあるが、簡単な面接を週明けに受けることになった。
アルバイトとは言え、初めての仕事に緊張を覚える。それに、この面接で不採用になってしまったらと思うと…
色々と不安になったので、翌日、履歴書と職務経歴書をバッチリと用意した。きっとこれなら書類が原因で落とされることはないはず。
面接は明々後日。さて、どうなるか…
◆真・転職回顧録-再びの就活編 7/27へ続く
次回:時給1500円。40代無職中年男のアルバイト事情。
これまでの記事を全て読ませていただきました。その中で塾講師の話が一番文章に活力があるように思え、塾を個人的に運営してみたらいいのではと素人ながらに感じました。