『離婚届け』
離婚届。
これまで見てきたどんな書類よりもインパクトが大きい。
物理的な重さ以上にズシンとくる。
数日後にはこの書類を役所に提出する。そうすれば妻との縁が本当に切れることになる。
そもそも夫婦であるかどうかは、この書類の提出だけで決まるものだ。
たったそれだけのことに過ぎないし、自分の気持ちにも整理をつけたはずだが、5年も一緒に過ごしてきただけに、やはりどこか寂しいものがある。
そしてこの『離婚届』には、夫婦以外のほかに二名のサインが必要だ。
妻側は義父にサインしてもらっていた。となると、私も父からサインをもらわなければいけないだろう。
そのためには実家とは郵送でやり取りすればいいのだが、それではあまりにも無責任だし、これまでの経緯も説明しなければいけない。
ちゃんと顔を突き合わせて今回の件を説明するのは最低限の責任だと思っている。
そこで昨日、離婚届を持って半年ぶりくらいに帰省した。
人生の中で最も気の重い帰省
お正月も明けたというのに、駅には大きな荷物を持った家族連れがチラホラ見かけられた。
これから帰省するのか、それとも東京に戻ってきたのか分からないが、その表情はどこか楽しそうだ。
その一方、私はこれから離婚届を持って帰省する。なんという対照的なワンシーン。
私と実家の関係性は、ハッキリ言って全くうまくいっていない。話をするたびに喧嘩ばかりしている。
両親としては、何をやっても中途半端に終わってしまう私に苛立ち、私としては、事あるごとに口出ししてくる親に苛立っているのがその原因だ。
こんな私たち親子がうまくいかないのは当たり前だろう。
さらには、離婚かつ無職という強烈なマイナス要因が二つも加わるので、この先何をやっても私と実家の溝が埋まることはないのかもしれない。
それを思うと、これほど気の滅入る帰省はないが、私は重い足取りで家を出てやがて駅に着いた。
新幹線のホームで10分ほど待っていると新幹線が到着した。車内は比較的空いていたので窓際の席に座ることができた。
発車して長いトンネルに差し掛かると、窓には40代無職の冴えない私が映し出されていた。
そこには、怒っているようなそうでないような何とも言えない複雑な表情の私がいた。
この前、物事がうまく進めるためにはまず明るい雰囲気作りから…と考えていたばかりなのに(40代無職男の大晦日を参照)、無意識のうちにこんな表情になっている自分に愕然とした。
その瞬間、今回の帰省は明るく振舞おうと決めた。
実家に到着して
新幹線から在来線に乗り換え、東京を出発してから約4時間。やっと実家に到着した。
実家に着いた私は努めて明るく振舞った。
おそらく両親は、精神的に落ち込んでいる私を予想していたようだが、思いのほか普通にふるまっているのを見て少し安心したようだ。
そのおかげで離婚届へのサインの件はサラリと切り出すことができた。
事前に電話で伝えていたこともあるのだろうが、あっさりとサインと押印してくれた。
当初私は離婚届を見た母は泣き出してしまうんじゃないかと心配していたが、『これが離婚届けなのね。いい機会だからよく見ておくわ』などと言い出す始末。
父などは、早く再婚相手を探せという。この二人はある意味、私よりも切り替えが早い。
もしかしたら両親は、私と同様に明るい雰囲気作りをしてくれていたのかもしれない。
とにもかくにも、離婚のことや今後のことなどを話し、一刻も早い社会復帰を目指して頑張ることを伝え、その日は久しぶりに穏やかな実家での一日を過ごすことができた。
こんな風にごくごく普通に両親と話すことができたのは、結婚報告のために帰省して以来かもしれない。また、無理矢理にでも明るく振舞ったことも功を奏したのだろう。
あとは、私が再就職出来たさえすれば、元の親子関係に戻ることができるはずだ。
兄との関係
今まであまり話に出てこなかったが私には兄がおり、医師として勤務している。
そして同じく医師を目指している姪と甥がおり、姪は今年受験だそうだ。現役合格できる可能性が高いらしい。とても優秀だ。
さらには3年後には甥も受験を控えている。
だが、受験に影響を与えないため、今の段階ではまだ私の離婚のことは話していない。受験が落ち着いたらすべてを伝えようと思う。
だからなんとしてもその時までには就職先を決めて、合格祝いのひとつもあげたいと考えている。
今の私にはこんなことも再就職のモチベーションにつながっている。
さて、数か月後の私はどうなっているのだろう。いや、どうにかしなければいけない。
今回の帰省は思いのほかプラスになった。
実家は相変わらず決して居心地のいい場所とは言えないが、確実にリフレッシュすることができた。
少なくとも両親は私のことを応援してくれている。今回はその気持ちを素直に受け止めることができた。
ところで、これもテレビの受け売りだが、アスリートに必要不可欠な要素はメンタルらしい。
将来を嘱望された才能ある選手とそうでない選手が二人いたとして、最終的には後者が生き残るケースが多い。
明暗を分けるのはメンタル。何度も挫折を経験しながらメンタルを養ってきた選手こそが大きく成長していくらしい。
トップアスリートと凡人の私を比較するのはおこがましいが、これは色んな人に共通することだと思う。
本音を言うと、「私はどの企業からも求められていないんじゃないか」「賞味期限が切れの人材だ」と思う時がある。
最近はそんな不安を無理矢理抑え込み、根拠のない期待で不安を上書きしているような毎日だ。
でも、ここを乗り切ればもう一皮むける。まだ絶対にいけるはずだ。
◆真・転職回顧録-離婚編 7/9へ続く
次回:東京に舞い戻った40代無職男
匿名さんのすごく上からのコメントに腹が立ちますね。しゅんさん等も同じ気持ちなのではないでしょうか。
そしてしばらくブログが更新されないことも心配です。何もなければ良いのですが。