無職がTOEIC受験を終えて
TOEIC受験が終わったのも束の間、その一週間後には私が最も注力している資格試験本番が控えていた。
試験時間は、午前と午後にそれぞれ二時間半ずつ行われており、合計5時間という長丁場だ。
幸い、過去問を解きまくったおかげで午前はとりあえず何とかなりそうな目途がついていた。
しかし、問題は午後試験だ。
設問がかなりの長文なので、題意を正確に把握することが難しい。
くわえて、技術的な内容が文章に含まれているので、特殊な前提知識が必要となり、センター試験の現代文よりも難しいと思う。
予め演習を繰り返しておかないと、ほぼ100%の確率でつまづくことになる。
合否の分かれ目は午後試験の出来に左右されるということは、この受験を決意した当初から認識していた。
そのため、対策を調べるために合格体験記などをネットで調べてみたところ、『午後試験は難しいので、1~2ヶ月くらいの準備期間が必要』などとする感想がどのサイトにも書いてあった。
私も時間的にはそれと同じくらいの勉強量をこなしていたものの、仕上げは不十分と感じていた。
満足のいく対策が十分にできていないと自覚していた私は、TOEIC受験が終わってからの一週間、ほぼ全ての時間をそれに充てることにした。
いけすかない奴がいた!
試験本番が目前に迫っていた。
その日、私は午前中から昼過ぎにかけて5時間ほど図書館で最後の追い込みを行っていたが、疲れのためか、明らかに集中力が落ちてきたのが分かった。
時刻は夕方に差し掛かっており、休憩がてらいつものドトールへ行くことにした。
まだ込み合う時間帯ではなかったため、順番待ちすることなく楽に座れた。その席は窓際にある眺めのいい特等席だ。
真後ろにある二人掛けテーブルには男性二人組が座っており、なにやら盛り上がっている様子。
彼らは私のすぐ近くなので、こちらに聞く気がなくてもその会話が嫌でも耳に入ってくる。どうやら、片方の男性が一方的に話しているようだった。
それは大体、次のような感じ。
『仕事が忙しくて睡眠時間が4時間しか取れないとかふざけたこと言ってた後輩を、この前辞めさせてやったよ。』
『俺はTOEIC 800点以上あるんだけど、~動詞の使い方が難しいんだよな。でも慣れれば簡単だよ。』
『この前管理職の誘いを受けたんだけど、逆に今より年収が下がっちゃうから断ったよ。今、一千万以上もらってるからこのままでいいや』
詳しい内容までは分からなかったが、大体こんな感じだった。
なんてつまらない会話だろう。武勇伝と自慢話しかしてない。それに、英語のところのくだり、文法的な解釈がちょっと違ってるし…。胡散臭さだけは疑いようがない…。
私としてはとても不愉快だったが、それが逆に『こいつより絶対いいスコアをとりたい!』とモチベーションに火を付けてくれた瞬間だった。
それにしても、周りに自慢でもするかのように自分の給料を大声で話すなんて、きっと性格に難ありなんだろう。
でも年収がすごいみたいだから羨ましい限りだ。雰囲気を読めないこういう人の方が、仕事には向いているのかもな…
さて、もう片方の人の様子はというと、どうやら聞き役に徹しているようだった。表向きは無難な返しをしていたものの、反応に困っている様子がなんとな~くこちらに伝わってきた。
その後、彼らよりも私の方が早く店を出た。
ちょっと気分を害したが、思いがけずモチベーションを上げることができたので、これはこれで良しとするか…
試験本番
そしてこのモチベーション事件の二日後、ついに試験本番を迎えた。
前夜は自信半分/諦め半分の複雑な心境だった。
『できる範囲内でベストを尽くしたので、これでダメならまた数か月後に受験すればよい。』
そう自分に言い聞かせて家を出た。試験会場は明治大学。
電車を乗り継いで明大前駅で降りた。今まで一度も利用したことのない駅だ。
初めてここを訪れた感想は、いかにも学生街と言う感じ。でも、こういう雰囲気は好きだ。
改札を出てすぐ前にある広場には、私と同じく受験生であろう人がたくさんいた。そしてどこか、全体的に緊張感が漂っている。
こういう空気感はとてもいい。朝の早い時間帯ということも相まって、身がピりっと引き締まる思いだ。
その雰囲気に呑まれてか、私はおもむろにリュックから参考書を取り出し、最後の悪あがきをしながら会場に向かうのだった
正門をくぐり、指定された教室に移動すると、試験開始の合図を待つ間、椅子に座って最後の勉強をしている人もチラホラいた。
年齢層は20代が過半数を占めているように感じた。私のような40代は全体の一割くらい。もっと早くにこの試験を受けておけばよかった…自分の意識の低さが悔やまれる。
やがて試験監督が入室してきて、教室内の空気がより一層ピリピリしたものになった。
受験上の諸注意や問題用紙の配布が終わり、いよいよ試験開始!
午前試験の出来は…
さあ、ここからが勝負だ。
ここまでアルバイトしながらもなんとか時間を捻出して頑張ってきたのだ。それに年に数回しか受験の機会がない。だからなんとしても今回でキッチリと合格したい。
しかし、はやる気持ちをまずは抑えて、ここはひとつ冷静に試験に臨む。
そして開始30分ほどで早くも一人が退室した。トイレに行ったのではなさそうだったので、本格的な退室なのだろう。
いくら何でもこんな短時間で解き終わることは考えられないので、早々に諦めたのかもしれない。
私はそんな光景を尻目に黙々と問題に取り組んだ。
もちろん分からない問題もあったし、出した答えが確実に正解とは言い切れないものなど、それなりに苦戦はした。
手応えはまあまあという感じ。例年と比べて出題傾向に若干の変化を感じたものの、基準点は何とかクリアしていると思われる。
結局30分ほど時間が余ったので、マークミスの有無を入念に確認した。
これで大丈夫だろうと安堵したところでペンを置き、試験管に解答用紙を提出。
そして昼食時間となった。
ちょっとした達成感もあって久しぶりにタバコを吸いたくなった。喫煙所に行ってみると、そこには試験の出来を語り合う数人のグループがはしゃいでいた。
こういう人は本当にどこにでもいるんだなあとつくづく思った。
おそらく過去、自身が受けてきたであろうセンター試験の時なんかも同じようなことをしていたに違いない。きっと周囲の受験生のひんしゅくを買っていことだろう。
午後試験に向け、気持ちを惑わされないようにそこを足早に立ち去り、私は再び教室に戻った。
午後試験の出来は…
そして、鬼門である午後試験がスタート!
出題形式として、解答必須問題と選択式問題の2パターンが用意されている。
必須問題はなんとかできた。全問正解とまではいかないまでも、最低限は解答できたという感じ。
そして選択式問題。得意分野にあわせてどれを選択するか予め決めていたので、それに集中した。
それにしても問題文が長く読み解くのに結構苦労した。出題者はもうちょっとわかりやすい日本語になるよう努力してほしい…
ところどころ文章表現がおかしい気がする。
ただ、問題文に悪戦苦闘しているのは他の人も同様だった。
午前試験の時はマークシートに鉛筆を軽快に走らせる音があちこちで聞こえてきたが、午後試験ではそうもいかないようで、試験開始後しばらくは周囲は静かなままだった。
頭をひねりながら問題と格闘すること2時間。分からない設問もあったが、自分なりにベストを尽くした結果となった。
集中していたせいか時が経つのがあっという間だった。
午前と午後を総合すると、おそらく合格しているのではないだろうか。本当は自己採点したいところだが、問題用紙に自分の解答をマークするのを忘れてしまっていた。
しかしこれでやっと、目標としていた一連の試験が片付いたことになる。
帰り道、安堵の気持ちと目標がなくなったことへの喪失感が入り混じりって少し複雑な感じがした。
40代無職バツイチ男、今後の目標を立てる
帰り道、恒例となったラーメン屋での一人打ち上げを行った。
そして帰宅したのは19時。いつもなら勉強している時間だ。
しかし、資格試験が終わった今となってはもう、その必要性がなくなってしまい、気が抜けてしまった。
心のどこかにある『合格』という根拠のない自信がその原因かもしれない。
そもそも無職生活で重要なのは、張り合いや緊張感をいかに維持していくということだ。
これらががプツリと切れてしまうと怠惰な生活に陥ってしまい、もう元には戻れなくなるかもしれない。
ということで、私は新たな自己啓発プロジェクトを立ち上げることにした。それは、これまでと同じくTOEICと他の資格試験を受験すること。
ただし、あくまで就職活動が大きな幹であることが前提。資格取得がメインとなってしまっては手段が目的となってしまい本末転倒だ。
資格取得はあくまで、頭を鈍らせないことと、企業に対する自己アピールのためだ。それを忘れないように机の前に張り紙をしておいた。
取得した資格をどう評価するかは企業次第。私としては、先方に提示できるカードを複数提示できるように黙々と作業するだけだ。
こうした方法論に対して指摘や批判をいただくこともあるが、個人的には資格取得が無駄だとは全く思っていない。
むしろ、自分の方向性とマッチしたものならば、どんどん狙っていくべきだと考えている。適度な刺激を得られるうえに自己啓発にもなるし、最終的にそれが再就職の一助になれば御の字だ。
さて、試験の翌日、試験がひと段落したこともあって私は久々にダラダラしてみた。
が、意外にも全く面白くない。そもそもやることがない。
これは自分自身の性格なのかもしれないが、きっと私は常に複数の目標を持っていないと落ち着かない性分なのだろう。
ところでこの日は天気がとても良く、家に籠っているとどうかなりそうだった。
なにか口実を見つけて外出したい、そう考えていた私はあることを思い出した。それはTOEICのこと。
先日、私はTOEICの単語帳を購入した。それを3周ほど回して分かったことは、内容が簡単すぎて頼りなく思えてきたということだ。
そこで私は早速、単語帳物色ツアーに出かけてみることにした。
◆真・転職回顧録-再びの就活編 13/27へ続く
次回:【速報】40代無職男、TOEICで驚きのスコアをたたき出す!
ご無沙汰しております。今回はがっかりだったかもしれませんが、TOEICは問題の傾向が変わりにくいので勉強を継続して受け続けていけば確実にスコアは(経験上)上がっていくはずです。頑張って下さいね。転職の方も成功お祈りしております。私も新しい所で苦戦しておりますが頑張っております。前も書きましたが40代はまだ決して遅くないですよ。