迫りつつある資格試験
インフルエンザでダウンしていた私には、万全の体調で臨めるかどうかが最大の懸念だった。
とりあえずほぼ完治したと思えるまで復調したので、寝込んでいた分を挽回すべく、本番までは、一日の大半を勉強に費やしていた。
しかし、自宅や図書館で机に向かって勉強に専念していても、ふとした瞬間に就職活動のことが頭をよぎる。
そのたびに、『この勉強は今後の就職活動を有利に進めるための必要なことだ』と自分に言い聞かせ、この間は就職活動を全く行なわなかった。
その甲斐もあってか、よくあるアルファベット3文字の略称、その意味、計算方法など、テキストのどこに何が書いているかも大体覚えることができた。
どんな試験なのか?
私が合格を目指しているこの資格はどんなものかというと、主にマーケティングに関するもので、今のところ知名度はそれほど高くはない。
難易度もそこそこ程度のものだ。
とはいえ、受験者数は年々増加しているようなので、数年後には結構メジャーになると思われる。
まさに今が狙い目なのかもしれないが、油断していると足元をすくわてしまう。
また、無職な私にとって再受験などというお金の無駄遣いはできないので、一発合格が絶対条件だし、なにより時間のある私が多忙な在職者に負けるわけにはいかない。
しかし、私を含めた受験者を悩ませる点があった。それは、問題集などが全くないため、試験対策がとても難しいということだ。
もちろん、公式テキストは販売されているのだが、毎年のように改訂が行われており、最新版のページ数は初版に比べて倍近くも増えている。
そのうえ、他の資格試験のテキストには各章の終わりに参考問題などが掲載されていることが多いのだが、このテキストにはそういったものは皆無。
分厚いテキストを一つ渡されて、『この中から出題するからね』と言われている気分だ。
おまけに、出題問題の漏洩防止という名目で過去問集すら存在していない。
過去問の公開が問題漏洩にはつながらないと思うのだが、おそらくこれは、試験委員のような組織体制が十分に機能しておらず、出題する問題のストックががほとんどないからだと思われる。
もしもそんな状態で過去問集を出版してしまうと、本試験が過去問だらけになってしまうので難易度が大幅に下がり、資格としての価値がなくなってしまうことを危惧しているのだろう。
試験対策完了!
そうした状況の中で活況なのが教育産業だ。
ご多分に漏れず、この資格の試験対策講座なるものがあちこちで開催されており、それを受講すれば合格する可能性が随分と上がるらしい。
きっと、試験対策で途方に暮れている人や、仕事で時間の取れない人はこうした講座を受講しているのだろう。
しかし、一番のネックはその受講料。3回分の授業と1回分の模試がセットになって75,000円…まるで資格商法のようだ。
情報が極端に少ない今の状況では受講者が多いのも頷けるが、それほど極端な難関資格でもないので、私には、その金額に見合うだけの価値は見いだせなかった。
そもそも、インターネットが発達した現代では、工夫次第で多少の対策はたてられる。それは合格者のブログを読むことだ。
ありがたいことに、出題問題の傾向などの記事があちこちのブログに掲載されており、そこから大体の傾向をつかむことができた。
また、テキストの文中には、解説の一環として挙げられている事例などが多少はあったので、それを頼りに問題を自作してみた。
他の受験者はどんな勉強をしているのだろうかと疑問に思うことがあったが、おそらく講座の受講以外では私と似たようなことをしているのだろう。
手探りながらもこんな勉強をしているうちにボンヤリしていた知識が明確になってきたので、知識定着のためのはこうした方法もアリかもしれない。
そこうしているうちに、だんだんと自信のようなものが湧いてきた。
受験の様子
そして受験当日。
今まで使ってきたテキストとノートをお守り代わりに持参して意気揚々と会場へ向かった。
前日にネットで試験会場の雰囲気を調べてみると、広めの会議室のように見えたが、実際に足を運んでみると随分と違っていた。
そこは個人経営の塾を彷彿とさせる部屋で、手作り感満載の教室のような雰囲気だった。そしてなによりとても狭い。
一つの長机に三人が詰め込まれ、十分な作業スペースが確保できない。
また、試験は主催者が用意するノートPCを使って解答するのだが、これがまた年代物だった。おそらく15年ほど前のものだろう。
今はもう吸収合併されたメーカーのもので、極端に分厚くて打鍵しにくい。きっと、ジャンク手前のものを安く買い叩いてきたに違いない。
不満は色々とあったものの、みんな同じ条件なのでこの環境に落胆していても仕方ない。まずは目の前の試験だけに集中せねば。
時間は90分で問題数は80問。1問当たり約1分しか割けないので、計算問題でモタついてしまうと命取りになる。
そんなことを考えているうちにいよいよ試験開始。
1問目、問題なくクリア!
そして2問目。初見の出題形式にぶつかった…いきなりつまづいてしまい、少し焦る…
しかし、ムキになって解こうとするとその後に影響してしまうので、ここは華麗にスルーして次の問題へ進んだ。
そんなことを何回か繰り返して解答を一通り終えると、残り時間はあと40分。やり残した問題に戻った。
落ち着けば簡単に解けた問題もあれば、やっぱり分からないものもあった。しかし白紙提出だけは絶対に避けたかったので、分からなかった場合はとりあえず3番を選択しておいた。
きっとどれかはまぐれ当たりしているだろう。
受験中は極度に集中しているせいか、時間が経つのが異常に速い。解答を見直しているとあっという間に残り1分になっていた。
全問に回答したことを確認し終わったところでタイムアップを迎えた。
振り返ってみると、当初は少なくとも8割後半は得点できるだろうと思っていたにもかかわらず、できない問題が多かったように思う。
試験直後の感想は、不満と不安の残るものだった。一発合格に暗雲が立ち込めてきた。
試験の結果について
はたして結果はどうなったのだろうか!?
普通の試験なら結果判明までに数週間かかるところだが、この試験はCBT方式ということもあり、その場で合否が分かる。
目の前の画面に表示されている『試験結果の表示』というボタンを押しさえすればいいのだ。
しかし、自信がもろくも崩れ去り、ただ不安しか残っていない私は、ボタンを押すのを2、3秒ほど躊躇してしまった。
やがて意を決してボタンを押してみると、なんとそこには・・・・・・・・・・・・・・・・
『合格』の二文字が!
ホッとしたというか体の力が抜けたというか、とりあえずはこれで目標を一つクリアすることができた。
ただ、得点率は78%というなんとも微妙な結果だった。予想を大幅に下回る結果に若干落ち込んだものの、それは贅沢というものだ。
とりあえず合格したのだから結果オーライ。今年初のおめでたい出来事だった。
例年の傾向からすれば合格率は60%に落ち着くはず。それからすれば今回、この教室で受験した人のうち、15人強が落ちてしまったことになる。
幸いにも私は合格ラインにギリギリ残ることができたが、あと数問ミスしていれば危なかった…
さて、これで新たな資格を履歴書に書き加えることができるようになったが、安心はできない。なぜならこの試験の合格者は、あるレポートを期限内に提出しなければいけない。
いわば課題のようなものだ。
とはいえ、他の人の丸写しなどあまりにひどいレポートでない限りは認定されるらしい。
そのレポート提出を以て正式な認定証が手元に送付されてくるという仕組みだ。これで就職活動が少しは好転すればいいのだが。
試験の帰り道
実はこの試験の後、私にはひそかに期待していることがあった。
それは、団体が保有している求人案件の紹介イベントだ。合格者が希望すれば、それに参加できるとの内容が試験案内メールに記載されていたのだ。
こうなったら何が何でも合格して、そのイベントに参加しなければ!考えていたが、実際に試験が終了してもそのイベントが実施される気配がない。
試験監督に質問してみたところ、今のところそのような予定はないという。
どうやらそれは古い情報で、訂正されないままメールに残っているということが分かった。
そんな大事なことは早く修正しろよとは思ったが、まあ仕方ない。とりあえず合格はしたので前向きに行こう。
その帰り道、祝杯ならぬ祝ラーメンで一人で祝杯をあげた。この日が来るまでは好物のラーメンを食べないと決めていたので、その味は格別だった。
満足して帰宅するとなぜだかドッと疲れが出てきた。緊張が合格により解けた反動かもしれない。
そのため、早く寝ようと11時半に就寝したが全く寝られない。疲れているのに1時間経っても2時間経っても寝られる気がしなかった。
きっと神経が高ぶっているのだろう。
無理矢理目をつぶりながら、今後の就職活動にどう影響が出るのかを考えていると、少し楽しみになってきた。
◆真・転職回顧録-再びの就活編 2/27へ続く
次回:40代無職バツイチ男、不眠症状を自力で治すまでの話
昨日、今日で一気読みしました。
何だか自分のことのようで、読んで辛かったです。
これからも頑張ってください。