私は無職
無職になってからというもの、しばしば変な人に間違われることがある。
この前も変質者に間違われ、あやうく通報されるんじゃないかと思った。
例えば、この記事。
小汚い恰好でチャック全開。反省している。
これは私の不注意も原因だ。
それ以来、身なりは無職なりに気を遣うようにしている。
にもかかわらず、またしても不注意により変質者とはいわないまでも変な人に間違われ、あろうことか子供たちから笑われてしまった。
これはそんな日の出来事。
不穏な空気
その日もいつものように図書館へ行った。
世間は夏休みなので、受験生など多くの中高生が自習室を利用する。
開館時間を少しでも過ぎると自習室の席がいっぱいになってしまうので、私は開館時間に間に合うよう図書館に到着した。
しかし、なぜかその日はいつもより人が少なかった。
きっと登校日のため学生も少ないのだろうなどと思いながら自習室に入ると、さっそく一番前の窓際の席に座った。
一息ついてパソコンに向かい一心不乱に記事を書いていると、その日の雰囲気はいつもとは微妙に違っていた。
どう違っていたかというと、いつもは静かな自習室が若干ざわざわしている。
そこで、さりげなく周囲を見渡してみた。
普段なら高校生から高齢の利用者でいっぱいなのだが、その日だけはいつもと違った
幼稚園くらいの児童とその母親、そして小学生ばかりだ。
小学生といっても低学年から中学年といった低年齢層の子供たちだ。
大人の男性が一人でこの部屋にいるのは明らかに違和感がある。
違和感の原因
様子がおかしいなとは思ったが、気になってしょうがないというほどではなかったので、そのまま作業を続けていると、やがて一人の女性が入ってきた。
これで大人の仲間ができたと安堵していたが、その人は席に座ることなく、そのまま皆が見渡せる位置に立った。そして、大きな声で「こんにちは」とあいさつし始めた。
この女性はおそらく図書館職員なのだろう。
これはどう見ても異常事態だ。
周囲がさらにザワつき始めた。
私は動揺していたが、司会の女性もまた、私を見て明らかに動揺している。
机の上をよく見ると、小さなチラシが目に入った。
そこには「おはなし会」との見出しで、どなたでも歓迎!と書かれてある。
どうやら、この部屋では今から子供向け朗読会が始まろうとしていたのだ。
誰でも参加歓迎と謳っている以上、この司会者も私を追い出すことができなかったのだろう。
しかしここで動揺を見せては周囲の爆笑を誘うことになる。
私はあくまで平静を装った。
いっそのこと朗読をBGMにして、このまま作業を続けてみようかとも思ったが、そうすればより一層、不審者扱いされるかもしれない。
司会者はやがて、今日の演目などを説明し始めた。
この日のおはなし会は「かちかち山」、「ごんぎつね」、「泣いた赤鬼」。
一瞬、「懐かしいな」など思ったが、今は感傷にひたっている場合ではない。
この緊急事態をどうにかして回避しなければならない。
いたたまれなくなった私はそっとノートPCを閉じ、笑いをこらえている子供たちの間をすり抜け、逃げるように部屋を出てきた。
とにかくその場から離れたくなり、私は結局、帰宅することにした。
ところで、夏休み期間などには、子供向けアニメなどのイベントが開催されることも多い。
最近では、そうしたイベントに一人で参加する大人の男性が多いという。
こうした人達は「大きなお友達」と呼ばれているという。
この話を初めて聞いたとき、私はそのネーミングセンスに爆笑していた。
しかし、40代無職になった私が、その大きなお友達になりかけようとは夢にも思わなかった。
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