無職中年バツイチ男の夏
早いもので、もう8月。
思えば、年明けに離婚と引っ越しを経験し、気が付けばあっという間に夏だ。
最近では、離婚前から使っていた扇風機がフル稼働している。首の角度を変えるときのガチガチッという音を聞くたび、その時のことを思い出す。
そして例年とおり、今年の夏もまた無職。
晩になると、ボンボンという打ち上げ花火の音が聞こえてくる。きっと、どこか遠くで花火大会が行われているのだろう。
発泡酒を片手に久々のタバコを吸いながら、夕方の空を遠い目で眺めながらその音を聞いていた。
やるべきことは分かっていながら、毎日、そんなことを自問自答していた。
アルバイト終了
丁度この頃、私は知人から紹介してもらったアルバイトに毎日通っていた。
日給一万円。交通費別途。
作業の進み具合によっては昼過ぎに帰ることもできるし、それでも日給は変わらない。無職にとっては大変おいしい条件だ。
しかし、そんなアルバイトも、8月の第一週で終わりを迎えた。
幸い、勤務先はとてもいい人たちばかりで、最終日にはマネージャークラスの人が私にお昼ご飯をごちそうしてくれた。
食うや食わずの私を見かねて…と言うわけではないだろうが、気にかけてもらえるのはとてもありがたかった。
そして、その翌週の金曜日に行われる会社の暑気払いに誘われた。
たかだかアルバイトの私が参加してよいものかと迷ったが、『そんなの関係ないから、ぜひ行きましょう!』と声を掛けてくれたので、ありがたく参加することにした。
場所は横浜にあるバーベキュー広場。みんなでワイワイいいながらお肉や野菜をたらふく食べた。
ここでは私が無職であることを隠す必要がない。この歳でアルバイトに来ているくらいなのだから、何か訳ありなのだろうということは皆が知っている。
だから私は何の後ろめたさを感じることもなく、飲んだり食べたり笑ったりすることができる。
ここ数か月の間で久々に感じた解放感。普段、人と接することが極端に少ないだけに、それを余計に感じる。
人間って、いくつになっても誰かと関わっていかなければ精神的にへたってしまうということがよく分かった。
そして私は、近くに座っていた社長さんに『アルバイトさせてくれてありがとうございました』とお礼を言うと、『もうちょっとしたらお願いしたい案件が出てくるから、その時はまた声かけるよ。よかったらまた来てね』とありがたい言葉をもらった。
本当にありがたい。
もし私の就職が決まったら、この会社に人たちにも報告しようと思った。
ディスイズニューカマー
さて現在、私が応募しているのは、おもちゃ会社と食品会社の2社。
これだけでは何とも心もとない。持ち駒は多いに越したことはない。
しかし、どの転職サイトを漁ってみても、出てくる求人は以前に見かけたものばかり。時期が悪いのかもしれない。
そこで困った時のハローワーク。
ダメ元で仕事探しに行ってみた。
ここの検索機は全部で30台くらいあるのだが、まさかの5人待ち。なかなかの盛況ぶりだ。みんな仕事を探すために必死なのだ。
もし私が普通に仕事をしていたら、こんな光景にお目にかかることはまずなかっただろう。
そして前回、ハローワークで仕事探しをしてから一週間と少しの時間が経過している。果たして求人内容はどれくらい変化しているのだろう?
まずはいつも通りの条件で探してみると、検索にヒットしたのは約1500件。いくら何でもこれでは多すぎる。
もう少し絞り込んでみると、300件くらいにまで絞り込むことができた。
『よし、これを全て吟味してみるか』
先日のバーベキューのおかげでいつも以上にヤル気がみなぎっていた私は、目を皿のようにして1件1件探し始めた。
すると、そんな私に仕事探しの神様が微笑んでくれたようだ。
なんと検索結果2ページ目にして、私にピッタリの求人が見つかったではないか!
業界的にも職種的にも、これこそまさに私が思い描いていたものだ。だが如何せん、英語力を要するという。
よく読んでみると、ここはドイツの外資系企業で、業務の関係上、本国と英語でやり取りする機会が頻繁にあるらしい。
なるほど、そりゃあ英語が必要になってくるわけだ。
ちなみに日本での知名度は全くない。
B to B、B to Cを問わず、ある程度の企業名ならば大体は知っている私でさえ聞いたことのないのだから、日本ではほぼ知られていないはずだ。
とはいえ、なんでこんな企業がハローワークに求人を出しているんだろう?
ヨーロッパの企業ならば、転職サイトに掲載した方がもっと優秀な人からの応募がたくさん来るだろうに。
その他にもいろいろと応募要件が記載されていたが、そのあたりはなんとか満たしている。ただ如何せん、英語が…
この時、私はあることを思い出していた。
それは数か月前、東京で働いている高校の同級生と飲んでいた時のことだ。
友人の言葉が背中を押してくれた
彼はお世辞にも成績がいい方ではなかった。
一応、高校は進学校であったものの、結果として彼は地方の私大に進学した。というか、そこしか受験できなかったらしい。
おそらく、ほとんど勉強しなくても合格できそうな感じの大学ではある。
その飲みの場で彼曰く、『できの悪い大学で過ごした4年間はまさに暗黒時代』とこぼしていた。
そんな彼は今、外資系企業でバリバリ働いている。
『お前、英語できたっけ?』と聞くと、『英語はやっぱり殆どできないけど、やってみれば案外何とかなるもんよ。』だそうだ。
そんな彼から発せられた「やってみれば何とかなる」という言葉には随分と説得力があり、強く印象に残った。
それもそうかもしれない。えいやで飛び込んでみれば案外うまくいく、か…
頭でっかちになって考えすぎるのもよくないな。
そんな友人の言葉を不意に思い出した私は、気付くとその求人を印刷していた。
合否を決めるのは企業側なんだから、応募した後のことを悩むのは私の仕事ではない。さっさと応募してしまえばいいのだ。
そんなこんなで、『でもまあいいか。これを見逃してしまうのはもったいない!』と思えるようになった。
友よ、ありがとう。
この求人に出会ったのも何かの縁かもしれない。
さっそく調査開始
そうと決まれば、さっそくライバルの動向調査だ。
まず窓口で応募者数を聞いてみる。すると、これまで15人の希望者にハローワークの紹介状を発行し、そのうち10人は既に不採用ということだった。
その理由はキャリア不足とのことだった。う~ん、外資系だけに結構辛辣!
残っている人はほとんどが40代~50代で、それ以外には1名の20代がいるらしかった。
この人たちはおそらく、英語ペラペラ or 経験豊富、そのどちらかだろう。
う~ん、ライバルはかなり手ごわそうだ。
しかし、まずは応募しないことには何も始まらない。
それに私にはい秘策がある。それは、短期離職を履歴書から省くという手法だ。
一見すれば、この履歴書に書かれた職歴はギリギリ許せる範囲に見える。履歴書にお化粧を施す腕前はかなりのものになっている。
仮に面接でメッキがはがれるとしても、そもそも面接に辿り着かなければ話が始まらない。職歴を突っ込まれたとしても、『短い職歴は書かなくてもいいと思った』とシラをきればよいのだ。
念のため、電話でこんな私でも応募が可能かを問い合わせてもらったところ、とりあえず書類を送ってくれと言われた。
吉と出るか凶と出るか。まあ、そこまで構える必要はないか。どうせダメ元なんだし。
私はこのチャンスに賭けてみようと思った。
そして自宅に帰り、恒例の『ハロワ検索』を実施(「40代無職中年男は砂漠の中で針を探す」を参照)してみることに。
特に不審な点は見当たらなかったが、一つだけ不思議なことがあった。
それは、口コミサイトでの情報が一切出てこなかったことだ。
もしかしたら知名度が低すぎることが原因なのかもしれないし、そうでないとしたら、なんらかのネット対策をしているか可能性も考えられた。
どちらにしろ、得られる情報はハロワ検索とコーポーレトサイトだけだ。
若干見切り発車的な部分はあるが、私は早速、応募書類の作成に取り掛かった。
履歴書と職務経歴書の作り方
私の場合、これまで幾度となく履歴書と職務経歴書にブラッシュアップをかけてきたので、ある程度の雛形は出来上がっている。
それを基に、企業ごとにアレンジを加えるという方法をとっており、前回記事(「40代無職中年男は砂漠の中で針を探す」を参照)で見つけた食品会社の分もまとめて作成した。
配偶者欄の『無』に〇をつけるのが少し悲しいが、今はそんな感傷的になっている場合ではない。
内容を足したり引いたりして試行錯誤の末、3時間ほどで応募書類が完成した。
ところで私は、応募書類の最終的チェックとして、私は毎回、ハローワークの職員にアドバイスを求めるようにしている。餅は餅屋だ。
それも年配の男性職員を指名して見てもらうようにしている。この理由は、企業側の採用担当者の属性を考慮しているからだ。
私の応募先は中小が多いので、そういったところは、ある程度の経験を経た担当者が書類選考をしていると考えているからだ。
再びハローワークに向かった私は、例によって年配の男性用職員を指名し、出来上がったものを見てもらった。
すると、『内容は問題ないが、レイアウトをもう少し工夫した方が良い』というアドバイスをもらった。
なんでも、内容のまとまりごとに一行空けると見やすくなるというのがその理由らしい。
たしかに、ギュウギュウ詰めのものは見にくい。おそらく読んではくれるのだろうが、最初の印象が結構違ってくるかもしれない。
これは今までにない観点からの指摘だったので勉強になった。
急いで帰宅した私は、履歴書と職務経歴書に先ほどのアドバイスを反映させ、これで書類は完成!
我ながら納得いくものができた。
できることはやった。あとは結果を待つだけだ。
果報は寝て待て。
◆真・転職回顧録-再びの就活編 21/27へ続く
次回:40代無職中年男に届いたメールは、良い知らせか悪い知らせか?
筆者に向けてだけ
書いているので…。