ここまでのおさらいと今回のお話
ノルマと成績の悪さに精神的に追い詰められていた私は。
そんな状態で今後の目標を設定提出するよう命じられ、半ばヤケクソな気持ちで数値を設定して上司に提出した。
どうあがいても無理な数値だ。
この時の私は、この会社ではとてもやっていけないという気持ちがあったのかもしれない。
上司と顔を合わせたくない私は、そお目標設定を提出した後、すぐに外回りに向かう。
そしてある日、外回りから会社に戻ってくると、社長に呼び出され新たなミッションを命じられた。
外部研修の強制受講
翌日、会社に目標設定を提出した(回顧録-36を参照)
提出したものにまた何か言われる前に、その日もまたすぐに外回りに出た。
必死になって15件ほど郊外の客先を回ったものの、目立った成果は得られなかった。
その日の帰社後、社長から呼び出され、ダメダメ営業マンである私を更生させるために1週間の外部研修を受けるよう命じられた。
きっと私の成績が芳しくないことは社長も把握していたのだろう。
いかに離職率の高い会社とはいえ、成績が悪い社員をすぐに切り捨てるようなことはしないようだ。
そこはありがたかった。
さて、肝心の研修内容はというと、名刺交換のやり方、セールストークの方法、プレゼン資料の書き方など。
時には、隣の席に座っている初対面の人とあいさつをするといったこともやった。
どれも新社会人が受けるような内容のものばかりで、一回は聞いたことがあるようなことばかりだったが、それでもせっかくの機会なので真面目に受講した。
『口角をあげましょう』
『名刺交換の際は相手の目を見ましょう』
『ハキハキと返事をしましょう』
最初は真面目に内容を聞いてはいたものの、次第にバカらしくなってきた…
やがて研修が終了し、実際に営業先で受講内容を実践してみたものの、残念ながら私の成績が向上することはなかった。
そういったこともあり、会社も私の成績低迷には歯がゆい思いをしていたのかもしれない。
目標設定についてのコメント
ある日、社長から面談室に来るよう言われた
おそらく、先日提出した目標管理についてコメントされるのだろう。
おそるおそるドアを開けて席に着くと、開口一番、『これでは不十分だ』と言われた。
目標値が現実的ではないという。
そんなことは自分も十分に分かっている。
しかし、給料以上の成果を上げ、なおかつ会社に利益を残すためには、その数字でなければ無理なのだ。
とにかくやり直しを命じられたので、もう少し数字を修正することにした。ただ、目標を低く設定しすぎるとまたやり直しを命じられることは容易に想像がつく。
そこで当初の数字よりも若干低くしたものをあらためて提出すると、OKが出た。
ハッキリ言うと、これも達成不可能な数字なのだが…
ところで、このころから『経営者目線を持て』などというスローガンが朝礼で頻繁に連呼されるようになった。
この他にも、どこかのビジネス雑誌で見かけたことのあるような成功者の格言がたくさん並べられる。
どれも言葉が薄っぺらい。
起業を志す人にはしっくりくる言葉なのかもしれないが、私のような人間には非現実的で話が頭に入ってこない。
毎朝こんな朝礼が繰り返され、内心、辟易していた。
新たなミッション
このころ、新たな男性社員が入社してきた。
聞けば、新卒で入った会社が肌に合わず早くに退職し、その後は一年ほどフリーターをしていたという。
最近よく聞くパターンだ。
そして、彼のOJTを私が担当することになった。
しかし、入社してからまだ日が浅く、成績の悪い私では役不足のような気がするのだが…
とはいえ上司から命じられたのだから仕方ない。できる範囲で指導しようと決意した。
さて、彼のことを仮にマツダくんとする。
OJTにあたって、まずは2~3日は座学で知識を頭に叩き込んでもらった。
そのあとは外回りに同行して実際の営業を体験してもらうことにした。
ただ、営業の同行といっても最初から郊外を連れ回すのは厳しいだろうと考え、なるべく都心にある顧客を中心に訪問することにした。
まだ社会人経験が浅いので、名刺交換の仕方や商談の進め方などを横で見てもらい、それを1週間ほど続けた。
そしていよいよ、実際に自分でやってもらうことにした。
もちろん、フォロー役として私が横についている。
傍で見ているとこのマツダくん、緊張でガチガチだった。
噛みまくる、資料を忘れるでフォローが大変だったが、私も新卒時はきっとこんな感じだったのだろう。
まあこのあたりは慣れだ。
外回りは楽勝とタカをくくっていたマツダくんだったが、段々と自分の力のなさが分かってきたのだろう。
日を追うごとにションボリしてくる様子が分かった。
そこで、彼を励ますために仕事帰りに何度か居酒屋に誘った。
飲み自体は好きなようで、そういう時は楽しそうにしていた。
いわゆるお調子者だが、かわいい後輩だ。
しかしただ一つだけ、彼には可哀想なことをしたと思うことがあった。
それは、実際に商談が成立する現場を見せてあげることができなかったからだ。
私の力不足以外の何物でもない。
そこでサービスの新規契約がとれそうな同僚に頼み込み、その日だけはそちらに同行してもらうようにした。
それにしてもOJTの一環とはいえ、外回りは一人より二人でする方がよほど楽しいと思う毎日だった。
社長から呼び出されたダメ営業マン。ついに恐れていた一言が…