元無職、今ダメ営業マン【転職回顧録-38】

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マツダくんの緊張はなかなか解けない

その日は訪問先で、契約内容の変更手続きを行うことになっていた。

事前に話す内容を打ち合わせして、何度もロールプレイングを行った。

彼も次第に慣れてきたのか、口調も随分と滑らかになった。

まあこれなら大丈夫だろうということでいざ出陣。

しかし、一言一句間違えないように話すということ気を取られすぎ、早口で噛みまくりの結果となってしまった。

横で聞いていた私も、彼が話す内容を全く理解できなかった。

先方の担当者もチンプンカンプンだったらしく、困惑した表情を見せている。

よく見ると、書類を持つ手が震えている。彼は極度の緊張体質なのかもしれない。

ここは先輩社員である私の出番だ。

マツダくんはちょっと顔が引きつっているようだ。

私としても内心、ヒヤヒヤものだったが、自然な感じでフォローに入り、マツダくんも交えて簡単な雑談を挟んだ。

5分後、なんとか必要書類をもらって事なきを得た。

この後、マツダくんはさすがに意気消沈して頭をうなだれていた。

そこで、とりあえず喫茶店に入り一息入れることにした。

すると、「先輩、俺、緊張しいなんです。ヤバいっすよね?」とポツリ一言。

ヤバいかヤバくないかといったら、おそらくヤバい。
しかし、「緊張なんて場数を踏めばそのうち慣れるよ」とアドバイスしておいた。

こういう場合、上司によってはその対応を叱責する人もいるかもしれない。しかし、私はそういう考えではなかった。

なぜなら今回の結果は、マツダくんなりに努力したがうまくいかなかっただけ。

そのプロセスを評価しつつも今後の改善策を一緒に考えた方が、本人にとってメリットがあると考えるからだ。

彼はデキるサラリーマンというよりは、かわいがられるタイプの人間だ。

親しみやすい人間として、むしろ私よりもはるかに結果を出せるのではないかと思う。
これがいい薬となって成長してくれることに期待していた。

彼には大きな伸びしろがあるはずなのだ。
だからこそ私は、これまでの経験から得た自分なりのコツを彼に伝えた。

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そしてある日、いつものように外回りを終え、社内で日報を書いていると社長に呼ばれた

おそらく、修正のうえ提出した目標設定の件だろう(回顧録-37を参照)。

提出してから約三週間が経とうとしていた。

私が部屋に入ると、そこで話されたのは設定した目標を達成できそうかどうかということだった。
内心、「到底不可能です!」と思ったが、それを口に出すことなどできない。

「厳しい目標ですが頑張ります」としか答えることができなかった。

ところで、私がこの会社に入社するとき一定期間は契約社員という形で入社し、それが明けると晴れて正社員登用されることになっていた。

つまり正社員登用が前提の入社だった。

しかしこのときついに、このままでは正社員登用は難しいということが言い渡された。

「正社員登用は難しい」という表現ではあるが、言い換えれば、契約更新はない、ここでゲームオーバーということだ。

たしかに、この成績ではそれも仕方のないことかもしれない。

V字回復がなければ双方合意による契約期間満了での退職ということになるだろう。
V字といっても、もとから成績は悪いのだが…

これでまたしても無職という現実が目の前に迫ってきた。

私は「そうですか」と答えることしかできなかった。
ここで何か気の利いたことを言ったとしても、再びチャンスが与えられるわけではない。

事実上の戦略外通告なのだ。
妻とも話し合いますとだけ伝えて部屋を出た。

もしかしたらこんな日が来るかもしれないと薄々は覚悟していたが、それが現実になると頭が真っ白になる。

残念ながら私はこの仕事に向いていなかったのだ。
そう自分に言い聞かせることしかできなかった。

ただ、これを妻にどう告げよう。
また無職に戻ってしまうことを妻はどう感じるのだろう。

こんなダメ夫にはもう愛想が尽きるかもしれない。

妻だけでなく、義実家、両親、友人にこの現状をうまく伝える自信はない。

今にして思えば、アラフォーの元無職が未経験で営業することなど無理だったのだ。
決して認めたくない現実がそこにあった。

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長く勤めた会社が倒産してからというもの、全てのことがうまくいかなくなってしまった。
自信すらなくなった。

戻れるなら、新卒で入社したあの頃に戻りたかった。

帰りの電車の中で、吊革につかまりながらでボーっと窓の外を眺めていた。

すると、妻との結婚式のことがずっと頭の中をめぐった。
あの頃は、二人の明るい未来に疑いすら持っていなかった。

◆ 転職回顧録-39へ続く↓↓

元無職のダメ営業マンは戦力外通告を受けた【転職回顧録-39】
ついに戦力外通告を受けた。クビだ。これでまた無職に逆戻り。あまりに挑戦的な会社を再就職先として選択しまったのだろう。
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