ここまでのおさらいと今回のお話
いよいよ受験シーズンに突入した。
1月も下旬に入ると、塾には進路に関する相談が多く寄せられるようになっていた。
そんななか、ある一人の受験生の指導を行うことになった私。
しかし、その指導にはとんでもない理由が。
半分無理だろうと思っていたが、その生徒はなんと合格した!
今日はそんなお話。
受験シーズン真っただ中
講師として一番困るのが、実力とかけ離れている学校を志望する生徒の指導だ。
多くの場合、親がその学校への進学を希望していることが多いのだが、むしろ本人の方が客観的に自分の実力を把握している。
その意識のギャップを埋めるのはとても難しい。
大体の場合、本人が考えている志望校ではなく、親が考えている志望校を目指すことになる。
1、2ヶ月で実力を劇的に向上させることはできないが、授業料をもらって指導している以上、講師の私が弱音を吐くわけにもいかない。
苦手分野を分析し、基礎的な理解が上がるよう授業を行った。
ある時は教科書の最初に立ち返ったり、より簡単な問題集を解かせたり…本人のモチベーションを上げながら、あの手この手で教え込まなければいけない。
こうした時期は講師も大変だった。
なにせ、担当している生徒は何人もいるので、色々な学校の過去問を分析しなければならない。おそらく、生徒の5倍くらいは問題を解いているだろう。
まあ正直なところ、入学後にどれだけ頑張るか次第なので、レベルに大きな差がなければ、どこの高校に行っても大差はないと思う。
これは私の実体験によるものだ。
私の場合、進学校に入ったものの、勉強をしなくなってしまい、その後の転落人生につながってしまった。
進学校に合格したとしても、その後の勉強を怠るとあとあと大変になるという典型的なパターンだろう。
困った依頼
ある日、生徒の個別指導を依頼された
なんでも、古文が全くできない生徒の指導をしてほしいという。
しかも本試験は三日後に迫っている。
そもそも私は理系科目の指導が中心で、古文は全くの専門外だったため断ろうと思ったが、対応できる先生が一人もいないのでなんとかしてほしいそうだ。
確かに私自身、センター試験受験のために古文を勉強していたが、その内容はほとんど忘れているし、そもそも一番苦手なのは古文だったのだが…
その子は偏差値的にそれほど高くはない学校を受験するということだったので、しぶしぶ引き受けることにした。
私はその日からほぼ徹夜で古文を勉強して授業準備を行った。
場当たり的指導
たった三日間で何ができるのかという思いがあったが、まずは過去問の分析からはじめた
そして、講師の私も古文が苦手だということを悟られないよう、なんとかうまくごまかしながら授業を終えることができた。
おそらく、この生徒の親も、付け焼刃的な思いで古文の個別指導を塾に相談してきたのではないだろうか。
一応、その最低ラインはクリアできる内容の授業ではあったが、私個人としては不本意だ。
講師の私がこんな状態では満足な解説はできなかったが、同じ日本人が書いた文章ではあるし、教訓めいた内容の出題が多い傾向にあったので、意味が分からなかったら文脈から推測しろという話をした。
何も対策しないよりはマシだが、かなり乱暴な指導だったと思う。
一方、肝心の生徒の反応はというと、いまいちピンと来ていないようだったが、なんとなく理解したような表情だった。
だが、もうそれで十分だ。
試験までの日数もあとわずかだし、ここはフィーリングで乗り切らせるしかない。
後日、話を聞いたところによると、この生徒は無事に合格したようだ。
おそらく、古文以外の他の科目の出来が良かったのだろう。
私にしてみれば綱渡りのような受験勉強で非常にヒヤヒヤした。
そして、公立学校の入試が本格的に始まろうとしていた。ここからが受験の本番だ。
また私も、色んな意味で非常に興味深い企業の面接が本番を迎えようとしていた。
受験生も必死だが、再就職を目指す私も必死だった。そして、ブラック臭が漂う企業の面接を受けることになった。