目 次
帰りの電車にて

Image by ErikaWittliebon Pixabay
その人を見たのは、仕事帰りの電車のなか。
彼は私のすぐ近くに立っていた。
年齢はおそらく50代後半。Tシャツの上からもよく分かるくらい腹は出ていた。
ずいぶんと昔のモデルのウィンドブレーカーを着ており、どこか黄ばんでいる。
背中には大きなリュックサックを背負っており、眼鏡や履いているスニーカーも薄汚れていた。
すぐ近くに立っていたからわかるのだが、ちょっと臭い。
パッと見た感じ、社会人のようにはとうてい見えなかった。
手に持っていたもの
彼は一冊の本を手にしていた。
それをよく見てみると、資格試験の参考書のようだ。
『よく分かるITパスポート』
たしかそんな感じのタイトルだったと思う。
題名は定かではないが、ITパスポートの初心者向け参考書だったのは確かだ。

Image by Free-Photos on Pixabay
ここからは私の勝手な想像だが、おそらく彼は無職かアルバイトだろう。だから、彼なりに安定した働き口を求めて何らかの資格を取ろうと思ったのかもしれない。
そこで技術者の登竜門的な位置づけであるITパスポートに挑戦しようとしたのではないだろうか。
確かに資格を取ってそれを今後につなげようとする意気込みは素晴らしい。しかし、ITパスポートはごくごく基本的な資格。
なので、新社会人や就活中の大学生など20代の若者ならば少しはプラスになる。
しかし、たとえ彼がこの資格を取得したとしても、あの風貌と年齢では就職活動には全く影響しないだろう。
そもそも書類選考すら通過することはないと思われる。
合格したとしてもそれが今後に有利に働くことはない。でも彼はそれに気付くことなく、苦悩する日々が続くのだろう。
それを見ていたとき、自分でもなぜそう思うのかは分からなかったが、悲しかった。
ただただ悲しかった。

Image by mohamed_hassan from Pixabay
『社会の底でもがいているけれども物事がうまく進んでいない』
そんな自分の姿を鏡越しに見た気がしたからなのかもしれない。
しばらくの間、彼の姿が頭から離れなかった。
オムライスにまつわる元妻の思い出
そんな悲しいワンシーンが頭から離れず、足取りはいつもより重い。
そこで途中で例の中華屋に立ち寄って何とか気分を持ち直すことにした。
温かいご飯を食べると少し気が上向いてきた。
その後帰宅して毎週見ている深夜帯のドラマを見るためにテレビをつける。
金曜日はいつもより少し夜更かしできるのだ。
このドラマは30分位の1話完結で、グルメをテーマにしたものだ。主人公が旅行先の寂れた食堂で何か食べるというだけの内容。
そして、この日のテーマはオムライスだった。
これを見たとき、私は妻のことを思い出していた。
思えば、元妻は料理が極端に苦手だった。
だが、そんな彼女でも一生懸命に夕飯を作ってくれることがあり、そういうときのメニューは決まってオムライスだ。
しかし、ケチャップの入れすぎでご飯はベタベタだし、そのうえ卵もフワフワではない。
お世辞抜きにも美味しいオムライスとはいえなかったが、苦手なりに頑張って作ってくれていることはよく分かった。

Image by meineresterampe on Pixabay
だから『うまくできたね』なんて言いながら一緒に食べていたことを思い出す。
その次のオムライスの日には私も一緒に台所に立ち、共同作業で大き目のものを作り、それを仲良く一緒に食べていた。
オムライスは私たち夫婦をつなぐメニューだったといえる。
しかし、離婚が決まってからというもの、だんだんとそうしたことも減っていき、二人一緒で何かするということもなくなっていった。
決して仲が悪かったということではない。会話もあったし、喧嘩も少なかった。ただ、私の甲斐性がなかったというだけだ。
離婚から一年が経過。今思うこと。
振り返ると、あれから一年以上が経過した。
私たち夫婦はごくたまにではあるが、それぞれの休みを合わせて都内に散歩に出かけていた。気に入ったお店を見つけてはフラっと立ち寄り、たわいのない会話を楽しんだ。
でも、そんな日常は私の会社の倒産によりあっさりと崩れ去った。でも自分がこうなってしまったきっかけは全て倒産のせいだというつもりはない。

Image by analogicuson Pixabay
むしろ、人生を再構築することのできなかった自分が情けない。
今はただ一人、築30年以上のオンボロのマンションに住み、毎日くだらないことで必要以上に悩みながら、そして愚痴を吐きながら生活している。
何をどうしたらよいのか、自分でもよく分かっていない。
それでもまずは働かなければと思って、昨年、なんとか再就職を果たした。
しかし、今となってはそれが正しい選択だったのかも疑問だ。
だから今、少しづつ色々な準備を始めている。
うまくいくのかどうかも分からないが、まずは一歩ずつ進めている状態だ。
気晴らしに、こちらもどうですか?
私の転落人生はここから始まりました





コメント
少し前の記事ですみませんが拝見して思うことがありましたのでコメントさせていただきます。
私は今はたまたま総務・採用担当をしていますが、以前コメント欄に書いたように現在の仕事に就く前はパワハラが原因で前職を辞めて1年3ヶ月無職でした。
そして「そろそろ仕事をしたいな」という気持ちになったタイミングで今の仕事の求人を見つけ無事採用され今に至りますが、自分もmiddle-manさんが電車で見かけた男性と似たようになっていても何らおかしくはなかったと思いますし、今後そうならない保証はどこにもないなとも思います。
(middle-manさんの推察が正しい前提で書きますと)そのITパスポートのテキストを持っていた男性がどうして無職になってしまったのか・・・
高校や大学を卒業して全然正社員としての職歴を詰めなかったのか、事業を営んでいたが破産したのか、病気等が原因で離職して何十年も経ってしまったのか、職歴がなくITパスに合格したから就職できるわけではないことは頭では分かっているけれど資格試験の勉強をする以外にできることもないということなのか・・・
そもそも推測の域を出ないため考えても仕方ありませんが、他人事とは思えないと感じました。
余談ですが、今年の秋に基本情報技術者試験を受けようと考えており、それもあってこの記事が特に目に留まりました。
基本情報を受ける特段の理由はありませんが、以前から取りたかったのと、7月に入れば仕事が一段落するため受験することにしました。
middle-manさんのような方からしたら基本情報は初歩の初歩かもしれませんが、情報分野に苦手意識がある自分としては結構難しいなと感じています。
アルゴリズムって何だっけ?という感じです(・・;)
一応C言語とかHTMLがどんなものかは分かる程度です。
せっかく勉強するなら合格そのものも大切ですが内容も理解したいと考えています。
以上余談でした・・・。
akito様
いつもコメントありがとうございます。
電車に乗っていると本当にいろんな人がいます。
それぞれにいろんなことを抱えながら生きてきたことでしょう。
言葉にできない複雑な気持ちを抱くことがしばしばあります。
逆を言えば、私も他の人からそう思われていることでしょう。
さて、基本情報の試験、akito様のチャレンジする姿勢をぜひ見習いたいです
難関ですが頑張ってください!
ここ最近のコロナの騒動で試験の開催はどうなるのでしょうね?
その頃には騒動が納まっているとよいのですが。
秋には様々な資格試験やイベント等が開催できる状況になっていてほしいなと本当に思います。
9年前にITパスポートを取った時の知識は記憶のかなたに消えてしまっていますので基礎の勉強から頑張りたいと思います!
akito様
コメントありがとうございます。
資格試験へのチャレンジ、脱帽です!
でも、akito様ならサラリと合格してしまいそうな気がします。
ぜひ頑張ってください!
数ヶ月前の記事に失礼します(_ _)
基本情報の勉強をはじめました。
実は数日前まで最高議決機関の会議(いわゆる総会)の責任者を任され、その対応で多忙でしたが、ようやく少し時間が割けるようになりました。
意外とITパスの知識が頭に残っている気がします。
試験開催の目処が立ちませんが秋に向け頑張りたいと思います。
また、午後問題でプログラミング言語を選択しなければなりませんが、思い切って全く知らないPythonを選択しようと考えています。
ちょっとやる気を出したいがためにコメントさせていただきました!
akito様
コメントありがとうございます。
総会の責任者ってすごいですね。
そんな要職に就ける人はほんの一握りでしょうから、さすがとしか言いようがありません。
あまりご無理をなさらずにしてください!
さて、ITパスですが、ping-tという学習サイトがおすすめです。たしか登録すればITパスは無料だった気が…
もしかしたらご存知かもしれませんがご参考までにどうぞ。
最近こういうことがありました。
スマホで為替チャートを見てたら、いきなり話しかけてきた方がいて、投資アナリストの資格を取ろうとしてる、とのこと。
年齢は50台後半かな。投資は何年やってるんですか?と聞くと、やったことがないとのこと。
どゆこと?と思いましたが、しばらく話をしてたら、生活保護でも投資できるかな?とのこと……。
できないし、アナリストの資格を取ったとしてもおそらく就職難しいし、なんとも微妙な気分になりました。
望みを持つことに反論はしないですが、こうなってしまうと、竹藪で大金を拾い警察に預けても落とし主が見つからなくて大金を得るとかそういう奇跡がない限り逆転は難しいと思いました…。
転職族様
コメントありがとうございます。
それはすごい経験しましたね。
まさか、声を掛けてくる人がいるとは。。。ということは、その人は転職族さんのスマホを横からずっと見ていたということでしょうか。
悪気はないんでしょうが、ちょっと怖い気がしますね。
「望みを持つことに反論はしない」というのは、まさに私が思っていたことにピッタリ!な表現です。
仰るとおり、なんとも微妙な気分ですね。
お疲れ様です。(長文です)
はい、お陰様で毎日コツコツですが積み重ねています。
しかし演習問題の模範解答と比べた自分の解答のクォリティーの低さに
やきもきさせられてます。
さて、僕が取り組んでる資格は中小企業診断士です。
弁護士や司法書士、税理士や公認会計士などの長期戦覚悟の資格はあまり
にリスキーだという判断のもと、投入する時間・費用に対して得られるスキル
が最も高いと判断した結果です。あと、職歴が大いに役立つ主要科目があったのも魅力でした。
しかし昨年本採用見送りが決定してから、資格を絞るのに一月を費やしてしまいました。
その後の失業給付を得ている間は足しげく、もとい2回/月はハロワに通い『就業相談』
はしてました。
「勉強してます」なんて言ったら給付止まっちゃいますもんね。
今はバイト探しの相談で、ハロワの係員に採用見送り後からは勉強を続けている
ことを告げると、応援されるのが不思議です。
認定と相談の棲み分けが生むギャップなんでしょうね。
本試験まで半年もない中で自分なりに必死こいた結果、1次試験通過。。。
は結果論で、自己採点でギリギリだったので、マークミスがあったら不合格。
なんて考えると2次試験へのモチベーションが上がらなかったんですね。
正式に通過の合格発表を確認してから慌てて2次試験に臨みましたが、
そもそも基礎知識が足りていなかったのと圧倒的準備不足で無残に散りました。
この試験、次回に限り1次試験が免除になるんですよね。
それ故、後がなく気合いを入れてる次第です。
尤も業務独占資格ではないので、すぐさまおまんまに有りつけるわけではないのですが、
コンサル、起業など夢も持てる資格です。受験資格もありません。
それにしてもMiddle-Manさんのサイト、”40代 無職 ブログ”で検索すると
ランキングサイトを除いてトップ表示されますね。
詳しくはわからないのですが、ホワイトハットSEOの特殊技術でもお持ちなんでしょうか?
人気ブログはランキングサイトから誘引されると思っていたので、感心しております。
田口様
いつもコメントありがとうございます。
中小企業診断士、すごいですね!
これを取得すれば企業や独立に現実的な夢が持てますね。
それだけでなくかなり就職に有利な資格だと思います。
一次試験免除のメリットを活かしてぜひとも合格してください!
そして、このブログに遊びに来ていただいて中小企業診断士の有意義なご意見をコメントしていただければとても助かります。
(akito様という読者の方が採用関連のお仕事をなさっていて、色々なご意見をコメントしてくれています)
話は変わりますが、たしかに40代 無職 ブログで検索するとこのブログがトップで出てきますね。
最低限のSEOをしているくらいですが、記事数が多いので上位に表示されているのかもしれません。
ちなみにその次の順位に出てくるnoteの記事も私が投稿しているコンテンツです 笑
お疲れ様です。
noteの記事、ちょっとだけ拝見いたしました。ここで書き溜めたネタの総集編みたいな
趣旨なのでしょうか。スピンオフではなさそうですね。
僕がブログを読むようになったのはそれほど昔の話ではなくて、一人で毎日毎日テキストと
問題に取り組んでいると息苦しくなって、ふと「俺と同じようなヤバい奴っているのかな?」
と思って検索したのがきっかけです。
その時は予測変換のせいか”40代 司法浪人 ブログ”という検索ワードに引っかかった
ブログを発見し、その文章の秀逸さと滑稽さから読み耽ってしまいました。
ところが、2014年から更新されなくなっておりまして。その前の記事で更新が
遅くなったのを反省している文章があったことを考慮すると、作者は道半ばにして
この世を去ったのかもしれないと解釈し、何ともいたたまれない気持ちになって
しまいました。
更新が途絶えた後もネット民の心無い投稿が続いていることにも胸を痛めました。
そんななかで、もっと前向きなブログが無いか探してみたところmiddle-manさんの
ブログにたどり着いた次第です。文才ありますね。読んでいて面白いです。
リアルな友達に愚痴ったり励ましてもらったりもしますが、新卒から安定して
勤め続け、結婚、育児と順調で至極真っ当な人生を歩む連中と分かり合うのには
限界があります。
その点こういう形で繋がったのも何かのご縁だと思います。
学習や就職活動(バイト)に面白そうなことが起きたら報告しますね。多分起きませんけど。
どうでもいい話ですが、今日冬タイヤ→夏タイヤに交換しに行ったら、タイヤが傷んでる
とのことで交換を勧められました。
そんな金ないですし、そもそも今年は雪が降らなかったため、冬と春の脱着二回で
7千円吹っ飛んだと思うと妙に腹が立ちました。
田口様
いつもコメントありがとうございます。
田口様の文章はとても読みやすいですね。
参考にさせていただいています。
さて、noteの記事は、このブログから転職回顧録だけを抜き取ってちょっとだけ加筆したものです。
ここからブログへの導線ができればと思って投稿し始めました。
といってもそこまで大きな期待はしていませんが。
それにしても勉強とアルバイトの両立は容易なものではありませんよね。
それだけでもいまの挑戦は尊敬に値します。ぜひとも合格を勝ち取ってください!
ちなみにもう更新されなくなったブログの件、実は私も読んでいました。たしかアメブロだったと思います。
その時ちょうど私はブログなどのコンテンツに関する仕事をしていた関係で、このブログの独自の世界観が話題になっていたのを思い出しました。
結局、ブログ作者が全て創作だとカミングアウトしたままその後の消息が不明となっていたように思います。
真相は果たして・・・
これはこれは個人的にタイムリーな話題です。
1月にiパスの試験を受けて、結果は850点で合格でした。
実感では900点と思っていたのでちょっぴり残念です。
この試験、今目指してる資格と親和性が高いんです。
晴れて合格したら「ITの基礎はわかってますよ」とのアピールになるかなと思って。
資格試験の1次試験科目にはITが入っているんですが、あまりにも科目が多くて
埋もれてしまうんですよね。
さて、件のおじさんですが、iパスの入門書ですか…これで就職は確かに厳しいですね。
ネカフェあたりでHP読むだけでいかに攻撃力に乏しい資格かわかると思うのですが。
描写されたおじさんのスペックから推測すると、エンジニア目指すよりは、MOSや簿記2級
辺りの実学を勉強するべきだと思いますね。
もっと言えば、AIに取って代わられる可能性が低い伝統工芸や料理人、ホスピタリティ系
が無難で近道だと思います。
こんなこと、一般人が指摘すると刺激を与えるだけなので、是非ハロワの門を叩いて
ほしいですよね。
少なくともiパス合格の先には断崖絶壁しかないことは教えてくれると思います。
それに採用率の高い職種への訓練プログラムもありますもんね。
学習の時間がもったいないです。
悲しい時~。方向性を間違った無職のおじさんに遭遇した時~~。ですね。
田口様
コメントありがとうございます。
あのおじさんが今どうしているかと思うとなんか悲しくなります。
田口さんの勉強の方はいかがですか?
個人的には田口さんがどんな資格を目指しているのかが気になります!
「悲しい時~。方向性を間違った無職のおじさんに遭遇した時~~」は、まさに自分の身につまされるようです 笑
>料理が極端に苦手
苦手なのは問題にならないですよ
本当に厄介なのは手間を掛けない人ですね。
ウチの奥さん、ジャガイモ・人参・大根、皮を剥かないし、
きって鍋に入れ醤油を入れるだけ、それでも手間を掛けている方で
コンロの鍋に入ったに茹でっぱなしの伸びたパスタと
テーブルに袋のママの100均のパスタのソースが置いてあるだけって日も多いですからね。
それが週に3日とか有るんでね。パスタは好きな方ですが見るのも嫌になります。
専業主婦ですが子供が二人いるので子育てが忙しいのですが、
洗濯・干すのも家に帰ってから私がしてますし
何だかなーと思う日々の愚痴です。すみません。
お疲れ様です。
電車で見掛けた男性のお話は、確かに切なくなりますね。
今より良い自分になろうとしているけど、報われない可能性が高い……
私もそう変わらない状況なので、他人事とは思えませんでした。
艶子様
ご無沙汰しています。
お元気ですか?
前進しようとしてもそれがなかなか報われない世の中ですね。
私のような社会不適合者には生きづらい世の中です。