ここまでのおさらいと今回のお話
またしても無職生活に突入。
何度も退職を繰り返す私に妻も呆れている。義実家も私の実家もカンカンだ。かといって次のあてはまったくない。もはや、再就職は絶望的な状況。
自分の意思で仕事を辞めたものの、もはやこの先どうしていいか自分でも分からない。
半ば自暴自棄になっていた。
そんな無職中年男に前職から一本の電話がかかってきた!
40代無職中年男にかかってきた電話
ちょっと感傷的になっていた私だったが、なんとか気持ちを落ち着けるため、自宅で一人、黙々とPC作業をしてた。
すると、一本の電話がかかってきた。
こんな暇な無職中年男に電話をかけてくる相手は大体見当はつく。
おそらくあの人だろう…そして、その用件もなんとな~くは予想はついている。
スマホをのぞいてみると、やはりあの人からの着信。
それは、私の後任であるAさん(【転職回顧録-外伝5/7】を参照)からだった。
とりあえず電話に出てみる。
電話の用件はやはり仕事のことだった。
データ集計のやり方が分からなくなったので教えてほしいという内容だった。
作業の肝となる大事な内容だったので、2~3回ほど繰り返し一緒にやったはずだが…
Aさんによると、教えてもらった記憶はあるものの、肝心のやり方が頭からスッポリと抜けてしまったらしい。
作業は特殊なツールを使うので、電話口ではうまく説明しきれなかった。
それでもなんとか30分ほど口頭で説明してみたが、まったく埒が明かない。
退職した私にヘルプを求めることは上司に言いにくかったらしく、今回の件は内密にしておいてほしいと懇願された。
そこで仕方なく、会社の近くにある喫茶店まで私が出向き、そこで説明することになった。
退職する前に入念な引継ぎをして、その念書みたいなものまで書いたので、私がこの電話に対応する必要性などまったくない。
それでもなんとかしてほしいというのなら、業務委託というかたちで料金を請求したいところだ。
会社から正式な依頼を受けての出張レッスンならば構わないが、個人的な依頼はこれが最後ということを条件に渋々引き受けた。
40代無職男の出張レッスン
結局、私を拘束した時間分のお金はAさんが自腹を切ることになった。要は個人的なレッスンということになるのだが、なんだか不健全だ。
ということで昼から都心に出向き、『個人出張』レッスンに行ってきた。
どこが分からなくなったかを確認してみると、作業自動化のために私が作ったツールの使い方だった。
どのリストのどこの行をどのように処理して~など、基本的なことがスッポリと頭から抜け落ちており、仕方ないので最初からレクチャーした。
画面を見ながら手取り足取り教えていると、Aさんも徐々にと思い出してきたようだった。
やはり、電話口よりも一緒にPCの画面を見ながら説明するほうが断然やりやすい。
これくらいなら周りに聞けば分かりそうなものだが、どうやらAさんのプライドがそれを許さなかったらしい。
プライドを持つのは大事な事だが、高すぎるプライドはかえって仕事の邪魔になる好例だ。
結局、この「個人出張」レッスンは2時間ほどで終わった。
それにしても、これでよく仕事が回っているなあというのが本音だ。
それでもなんとかうまくやっているということは、組織から誰かが抜けたとしても、仕事なんていうものは案外うまくいくものなのだろう。
替えの人材はたくさんいるのだ。
きっとどこの会社でもそれは同じで、仕事とはそういうものなのだかもしれない。
帰り道、休憩がてら喫茶店に寄った。その店はチェーン店でコーヒーが安い。
臨時収入もあったことだし、ケーキセットで一息ついた。
ふと周りを見渡すと、スーツ姿で電話している人やノートパソコンをカタカタしている人がたくさんいる。
きっと外回りの営業さんなのだろう。バリバリと仕事をしている。
こういう人達を見ていると、少し焦ってきてしまう。
そういえば私も営業で外回りしているとき、たびたびサボって喫茶店で仮眠していたことがある。
もちろん熟睡はできなかったが。それが今はどうだ。
いい歳した中年無職が仕事もせず、日中にケーキセットを食べながらボーっとしている。
そんな社会不適合者である私と、真面目に働いている社会人を比較すると、どうしても卑屈になってしまう。
まあ、仕方ない。私は自分一人の力でお金を稼ごうと決めたのだ。
急な電話で思いがけず単発の仕事をすることになったが、それがかえって私によい気分転換の機会を与えてくれた。
もう前へ進むしかない。
パワハラで辞めた会社の同僚である熊さん。彼は今、何をしているのか?