ここまでのおさらいと今回のお話
倒産を経験したため、『民間企業ではなく安定した半官半民の会社にしよう。職場環境も穏やかそうだし。』なんて寝ぼけたことを考えていた私。
今思うとバカげているが、当時はそれがよいと信じて疑わなかった。
今思うとこれが間違いの始まりだった。
半官半民だろうと何だろうと楽な仕事はない。どこもそれなりの厳しさがあるのだ。
そんなバカな私は連日のようにハローワークで仕事を探し、ある求人と出会うことになる。
その名は「営業」。40代無職にとって、これはまさに禁断の果実だ。
そして私は遂にそれをかじろうとしている。
これがその後の転落人生に拍車をかけることになるのだった。
ハローワークな人々
倒産を経験したことで、私は安定重視の考えに傾いていった。
そのため、『なるべく公務員っぽい仕事!半官半民!今後の方向性が決まった!』などと安易に考えながら、お宝求人を発掘すべくハローワーク通いに精を出していた。
あまりにも毎日通いすぎたせいで、職員から「お疲れさまでした。また来てください」と声をかけられるくらいだ。
別に、職員には悪気があるわけではない。
何か声をかけてくれようとして、つい口から出てしまった言葉だということは分かったので、こちらも笑顔で会釈してハローワークを後にする。
なるべくならそんなに来たくはないのだけど…
ハローワークは人材の宝庫(色んな意味で)
それにしても、ハローワークにはいろんな人がいる。
一応、職を探しに来てはいるのだろうが、パッと見る限りはそんな風には見えない。
そのうえ、お世辞にも身なりがキレイとはいえない人も多い。
悪い意味で人材の宝庫だと思う…
もしかしたら、再就職できない期間が長引き、心がすさんでしまったのかもしれない。
ここのハローワークは出張所的な小規模な位置づけなので、求職者の相談内容が周囲に丸聞こえなのだ。
そんななか、聞こてくる内容と言えば、仕事のえり好みが激しかったり、面接に行くのを面倒くさがったり。
ある人は、面接地が遠いという理由だけで選考を辞退していた。
じゃあなんで応募したんだよ…と言いたくなってしまう。
また別の人は、自分にはもっとふさわしいし仕事があるはずだといって職員に食って掛かっていた。こんな難癖をつける人がいることに驚いた。
その他にも、職員と世間話に花を咲かしている人もいる。
しかし、世間一般から見れば、40代無職の私もこんなダメな感じの人たちと同種なのだ。
ここで気持ちが完全に折れてしまえば、この人たちと同じように、本当にどうしようもない人間になってしまいそうで怖かった。
もしかしてお宝求人か!?
そんな人たちを尻目にいつものようにハローワークで求人検索をしていたときのことだ。
とある求人が目に留まった。
なんでも社会貢献事業を主業種とする会社の営業職の募集だった。事業内容は安定しているようだ。
いつもの私なら営業職は無条件に選択肢から外しているはずだった。
また、口八丁手八丁で世の中を渡り歩く営業は、口数が少ない私には向いていないとも思っていた。
だが、なぜかこの求人だけは私の目に留まった。
そして、現状の再就職活動がうまくいっていないのだから、職種変えも視野に入れなければいけないという考えが頭をよぎった。
そこで、いったんその求人票を持ち帰って慎重に検討することにした。
そして妻と話し合った結果、営業という新たな可能性にチャレンジすることを選択肢のひとつに加えることにした。
禁断の果実、その名は営業
まるで人生の新たな一歩を踏み出したような気がした。
正直、この時はモチベ―ションがかなり上がっていたと思う。
翌朝、ハローワークでこの求人への応募人数を聞いてみたところ、その時点で50人とのこと。これは結構な高倍率だ。
そして、これまでハローワークで何回募集を行っているかも聞いてみた。これは、人の出入りが激しいかどうか、つまり離職率の高低を判断するためだ。
すると、1年前に一回募集していたらしいが、これくらいなら人の出入りが激しいとまではいえないだろう。
さらに、この企業のエゴサーチをしてみたが、なんの悪評も出てこなかった。
特にブラック企業ということもなさそうだ。
念押しのため、ハローワーク職員に求人の詳細を電話で問い合わせてもらったところ、営業未経験でも応募可能で、書類選考を通過した場合は筆記テストを実施するということらしい。
これで必要な事前調査は終了だ。
特に問題なさそうだ。自分の中でGOサインが出た!
しいていうなら筆記テストが気がかりだったが、まあなんとかなるだろう。
その場で紹介状を発行してもらい、まずは応募書類の準備に取り掛かった。
無謀にも未経験営業の求人に挑む無職。その結果は果たして?