ここまでのおさらいと今回のお話
A社の筆記試験に合格し、面接試験に進めることになった。
なんとしてもこのチャンスをものにしたい。
そのためには入念な準備が必要だ。しかし、ハローワークなどは予約でいっぱいだった。
しかし、うってつけの人がいた。
年齢といい、本番と同様の緊張感を以て臨める点といい、面接官役としてはピッタリだ。
はたして面接本番に活かすことができるか?
模擬面接官の正体とは
どうしようか考えていると、意外にも、すぐ身近に面接対策にピッタリな人がいることを思い付いた。
それは義理の両親だ。
義父と義母ともに60代。
面接官というには少し年上だが、本番と同じ雰囲気で面接の練習ができそうだ。
さっそく、電話で事情を話すと快諾してくれた。
面接官になりきってもらうために会社HPのURLを伝えて、事前に企業情報に目を通してもらうようお願いし、質問事項は自由に決めてもらった。
まさに何を聞かれるかわからない、本番さながらの雰囲気で、いいもい面接ができそうだ。
当然、こちらも質問されるであろう項目を頭に叩き込む。
模擬とは言えども真剣勝負だ。
依頼してから三日後、義両親が我が家にやってきた。
車で数分のところに住んでいるので、こういう時に融通が効く。
我が家に来た義母はノリノリの様子。
さっそく面接室に見立てたリビングに入ってもらう。
10分ほど準備したいということで、その間、私は部屋の外で待機した。
入室合図をするのは妻の役目だ。
無職40代中年男の模擬面接の評価はいかに?
2、3分すると、中から妻の声が聞こえてきた。
「どうぞお入りください」
いつもとは違ってワントーン高い声色になっている。ちょっと笑いそうになってしまう。
私はゆっくりとドアを開けた。
面接官にお尻を向けないよう体勢をうまく入れ替えて…など、転職サイトに掲載されていた面接マナーを思い出しながら入室する。
そして、椅子に座る前に氏名を名乗ってから椅子に座り、椅子の横に鞄を置く。これも転職サイトのマナーのとおりだ。
我ながらスムーズにできたと思う。
そして模擬面接が始まった。
事前に予想される質問事項とそれに対する回答を頭に入れていたものの、予期していない質問事項もいくつかあった。
数秒ほど、記憶を呼び起こし、しどろもどろで答える。
こういう想定外の質問は、本番に向けてたいへん勉強になった。
そして15分ほどで1回目の模擬面接が終了。
辛口な面接講評
終わった後に面接官側からみた私の印象を聞いてみると、次のような感じを受けたそうだ。
「少し早口」
「文章を読んでいるみたい」
「笑顔がない」
こうなってしまうのは、記憶をたどりながら回答していることが原因だと思う。
そしてそれは、志望動機や長所・短所などは一字一句覚えようとしているからなのだ。
覚えたことをそのまま話すとどうしても台本を読んでいるような口調になる。
そうなると余裕がなくなって表情が乏しくなるし、いったん間違えてしまうと、焦りのあまり頭の中が真っ白になってしまう。
やはり、暗記したものを面接では吐き出すという方法論はとらないほうがいいということがよく分かった。
その点を修正して2回目の模擬面接開始。さらに修正して3回目の模擬面接開始。
これで今日の面接対策は終了。
模擬面接とは言うものの、結構疲れた。しかし、自分では気づかない点を確認することができたので、大変有意義だった。
なかでも、一番改善しなければいけないと感じた点は表情だ。
私はどちらかというと無表情があまり表に出ない。かっこよく言うとポーカーフェイスだ。
人によっては落ち着いた雰囲気と受け取ってくれるかもしれないが、ニコニコしているに越したことはない。
だとすれば、今の状態は面接で不利に働きそうだ。
とくに、口調と笑顔は普段から意識しなければ治らないので、本番までには少しでも修正したいところだ。
その後、義理実家と一緒にファミレスへ行き、ささやかな激励会を開いてもらった。
そしていよいよ、面接本番の日がやってきた。
もうやるしかないのだ。
最終面接日を迎えた。クリーニング済みのスーツに着替え、いざ出陣!