【転職回顧録-28】40代無職中年男はもう死んだ

色々と苦戦はしたが、やっとのことで内定を得ることができた。

もうこれまでの私は死んだ。40代会社員中年男として生まれ変わったのだ。

それまでのフリーター生活では起床時間はまちまちだったが、こうして会社勤めをするようになると、日々の生活リズムが規則正しくなる。

その日も6時半に起床し、朝食をとってから身支度を済ませてから出勤する。玄関で私を見送る妻の表情もどこか明るい。

そして会社に到着し、準備してきた必要書類を総務に提出した。

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これで入社手続きは全て終わった。晴れて会社の一員になったのだ。

もうお客様ではない。心地よい緊張感とともに、この会社で頑張ろうと気持ちを新たにした。

気合をいれて出社したものの、入社したばかりの私にできることはほぼない。今は業務のレクチャーを受けながら独り立ちの準備を行うべく知識のインプットが先決だった。

業務の概要は頭に入ったが、実務をこなすときにまた新たな疑問が出てくるだろう。その時はまた聞けばいい。そう思いながら、日々を過ごしていた。

さて、社内の雰囲気はというとまだうまくつかみ切れていなかった。第一印象としては、各自が淡々と仕事を進めているようだった。

しかし、どうも生理的に受け入れにくい点があった。

それは、来客のたびに社員全員が起立してお客さんに挨拶することだ。それ以外にも様々なローカルルールがあるようで、それらも把握していかなければならない。

これまでは比較的自由な社風の会社で働いてきた私にとって、初めて経験するルールが細かく決められていることに窮屈さを感じていた。

そうはいっても、この会社で生きていく以上はこのルールに従わなければならない。

「少しの間の我慢だ。慣れてしまえば何ということはない。」そう自分に言い聞かせた。

そして入社以降、初めての金曜日を迎えた。実はこの日の会社帰りにやりたいことがあった。

それは、会社の近辺にある繁華街を散歩してみるということだ。

それまでは無職だったため毎日が週末のような気分だったが、その時と比べて会社員として過ごす週末の帰宅時は解放感がまるで違う。
それだけではなく、仕事をコツコツ頑張ったという誇らしい気持ちでいっぱいだった。

そんな心地よい解放感を感じながら、夜の街をブラブラとあてもなく歩いてみた。

道路沿いに立ち並ぶ煌びやかな店のショーウィンドウには魅力的な商品が展示されており、道行く人の目を引いている。

「妻には心配をかけたから財布でも買ってあげたい」
「給料が入ったら、この靴を買いたい」

そんなことを考えながら付近を散策した。

40代の中年ならば働くことは当たり前のことかもしれないが、この不況の中、転職を成功させた自分自身を褒めてやりたかった。

そんなことを考えながら、辺りをしばらく歩いてから帰宅した。

その翌朝、妻からこんなことを言われた。

「寝言で仕事のことを話してたよ」

おそらく、「仕事内容を早く覚えなければ」と思うあまり、頭に叩き込んできた内容が寝言になったのだろう。

そもそも自分が寝言を言っていたことに驚きだが、その内容が仕事のことだったということにさらに驚いた。それほど気負っていたのかもしれない。

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そして朝食を食べた後、少し時間があったので、自宅に持ち帰った資料に目を通した。仕事を早く憶えるため自分なりに必死だったのだ。

土曜日と日曜日は比較的リラックスして過ごすことができた。なにしろ、もう求人サイトとにらめっこする必要がなく、やっと転職できたという安ど感でいっぱいだったからだ。

そんなこんなで休みはあっという間に過ぎていった。

そして迎えた月曜日。

私は営業職として入社したため、いつまでも商品知識を社内で勉強するだけでは十分な成長は見込めない。

そこでこの日からいよいよ、先輩社員に同行して実際にお客さん先を回りながらのOJTが始まる。

営業のためにお客さん先を回るのは社会人人生の中で初めてのことなので不安はあったが、やる気は十分だった。(回顧録-29へ続く)

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