転職回顧録-41

翌日の出社後、上司に退職することを伝えた。

担当顧客の数がかなりの数にのぼり、短期間での引き継ぐが難しいため、半月ほどかけて実施することとし、退職日は一ヶ半後と決まった。

なんとも中途半端な期間設定だが、慌ててバタバタとするよりは遥かによい。

そして後任には、私がOJTを担当したZ君に決まった(転職回顧録-38を参照)。少々心配だったが、また面白い日が始まりそうだ。
これに加えて、また新たに入社した女性社員一名のOJTを任された。


これまで私は二人の先輩社員から引継ぎを受けてきたわけだが、その後間もなく、自分が引継ぎをする立場になろうとは予想だにしていなかった。
社員の出入りが激しいのがこの会社の特徴だ。

さて、仮にこの女性新入社員をYさんとする。
Yさんは新卒での入社に失敗したいわゆる第二新卒だ。なんとか頑張ってこの会社に入社してきたらしい。
もうすぐ退職しようとする人間が担当するのも妙な話だが、せめて退職までの残りの期間を私とZ君とYさんの三人で楽しくやっていこうと決めた。

もう退職することが決まっていたので、皮肉にも以前と比べて気分は随分と軽やかになっていた。とはいえ、彼らにはなんとか実際にサービスの売り込みから契約までの流れを間近で体験してもらいたい。
そう思った私は、自分の成績を上げるためではなく、教育のために、小さくてもよいから少しでも多く契約をとりたいと考えるようになった。

かくして引継ぎ兼OJTが始まった。

まず初日は、新宿や丸の内といったオフィス街で外回りを行った。
この辺りは比較的仕事がやりやすい。複数の訪問先を徒歩で移動できるからだ。
また、道を行きかう多くのビジネスマンや立ち並ぶ高層ビルを見ることで自分のモチベーションも上がる。

そして1件目の訪問先に到着。
まずはZ君に、今までの私とのOJTの成果(転職回顧録-3839を参照)を披露してもらうため、訪問時のあいさつ、名刺交換、相手方担当者との商談の序盤までを任せてみた。商談といっても大層なものではなく、要は世間話だ。
相変わらずのガチガチだったが、多少はマシになったようだ。成果はすぐに現れるわけではない。頃合いを見計らって途中で私にバトンタッチし、今利用してもらっているサービスのアフターフォローや新サービスの紹介まで行った。

そんなこんなで1件目終了。
Z君は無事大役を果たしたことで若干のしたり顔。
Yさんはというと、訪問中は神妙な面持ちで一連のやり取りを見ていたものの、今は嬉しそうな顔をしていた。
彼女になぜそんなに嬉しそうなのかと尋ねてみると、学生時代に接客業のアルバイトをしていたそうで、人と接する仕事が好きなのだという。

たしかにいつもニコニコしていて好感が持てる。
ひょっとしたら彼女にとってこの仕事は天職なのかもしれないと感じた。

明日はいよいよ郊外の顧客に訪問する。
私が退職して会社からいなくなってしまう以上、これまでのように新人に配慮して都心の顧客だけを回る(転職回顧録-38を参照)というわけにはいかないのだ。(回顧録42へ続く)

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