ここまでのおさらいと今回のお話
何かのきっかけをつかみたかった私は、藁にもすがる思いで転職フェアに参加してみた。
実際に会場に足を踏み入れると、中は熱気にあふれ転職を志すたくさんの人たちであふれていた。
私以外にもこんなにも仕事を探している人たちがいる。それはキャリアアップのためか、はたまた単に無職なだけなのか。
殆どの人がスーツを着用しているので、皆がどんな思いでこのフェアに来ているかは分からない。
しかし、ここに集まっている人たちを見ていると、前向きな気持ちを取り戻しつつあった。そんな私に声をかけてきた企業があった。
転職フェアへの参加
今回の転職フェアは主に技術者向けだ。
11時スタートで、私が会場に到着したのは11時半過ぎだ。会場には多くの企業がブースを構えている。
開始間もない時間帯にもかかわらず、会場はすでに多くの人で埋め尽くされていた。
年齢層は幅広く、20代後半から50代だったように思う。
私と同じように、藁にもすがる思いで参加している人はどれくらいいるのだろう。
それとも順調にキャリアを積み、さらなるステップアップを目指している人ばかりなのだろうか。
こういうところに来ると、周りと比較して自分がひどく低レベルな人間に思えてしまう。
受付を済ませると、志望する業界が記載されたネックストラップを渡された。
参加者はそれを首にかける。
各ブースの採用担当者は、そのネクストラップを見て声を掛けてくるという仕組みだ。
通路を5mほど歩くと、2,3人から「うちのブースに話を聞きに来ませんか?」と声を掛けられる。
まるで自分がスーパーエリートサラリーマンにでもなったかのように錯覚してしまいそうだ。
気分は決して悪くない。
しかし実際は、再就職がなかなか決まらない惨めな40代無職男に過ぎないのだが・・・。
でも、このような雰囲気の中にいると、モチベーションも上がってくる。
「これだけ多くの人が頑張っているのだから、自分も負けるわけにいかない」と思える。
それだけでも来たかいがあったかもしれない。
勧誘の声を適当にやりすごしながら、自分の経験が活かせそうないくつかの企業に訪問してみた。
一通りの会社説明を聞いた後、自分の得意分野や経験職種を伝えて「この経験を御社で活かすことはできないか」と聞いてみた。
しかし、ほとんどの場合はこうなる。
「面白い経験で個人的には興味はあるが、現在のところ、社内での需要は低い。念のため確認してみるので、何かあったら連絡する」
その後の連絡が来たためしはない。
私の経験がニッチすぎるのだ。
無理もない。
しかし、こう言ってくれる会社はまだマシだ。明らかに興味なさげに話を終わらせようとする会社もある。
最近の転職動向は売り手市場と言われているが、少なくとも、私のような40代無職には関係ない。
彼らはスーパーマンか若手が欲しいのだ。
客先常駐という選択肢。SES企業からの勧誘
私の経歴に興味を持ってくれる企業はなかなか見つからない。
落胆して歩いていると、私に声を掛けてきた企業があった
この後の予定が入っているわけでもないので、冷やかしでそのブースに行ってみることにした。
この企業は請負開発を主業種としているベンチャー企業で、要は、客先常駐できる人材を多く集めたいということのようだ。
そのため、どうしても私の面接をしたいという。
おそらく、採用担当としては1件でも多く面接のアポをとったという実績がほしいのだろう。
私がその実績作りを手伝う義理はないのだが、今後の面接の練習にはなりそうだ。
表立っては言えないお互いの思惑が合致し、後日、面接の場が設けられることになった。
客先常駐という時点でその企業への興味はなかったが、利用できるものは積極的に利用していくに限る。
こうして、フェアへの参加により適度な刺激を受けた私は、低下したモチベーションを回復させることができた。
帰り際、出口で500円分のクオカードを景品としてもらった。
帰宅後、その商品券を妻にプレゼントすると喜んでくれた。
今は、この程度のことしか妻にしてあげられないことが悲しかった。
練習もかねて面接に向かった私。そこで若いベンチャー企業ならではのお粗末な対応を味わうことになる。