ここまでのおさらいと今回のお話
緊張の初日も無事終わり、いよいよ二日目。
この日も前日と同じように座学で一日を過ごした。
しかし、早くも不可解な出来事が起きた。
まず、直属の上司がいない。そしてなんと、私の雇用形態が正社員ではない可能性が!
そんなバカな…これは明らかにおかしい!
まずはそこであらためて雇用契約書の内容を確かめてみた!
不可解な雇用契約書の中身
直属の上司が見当たらない理由が判明した。
聞けば、私が入社する一週間前に退職していたことが判明。理由はどうやら契約期間満了ということらしい。
『は!?契約期間満了?』
正社員の場合、退職理由に「契約期間満了」という文言は使わないはず。
ということは、私の上司だった人はそもそも契約社員だったのか?
ここは私の雇用形態を確認しておかなければならない。この会社は業界では名の通った企業であり、そのあたりに間違いはないはずなのだが…
そこでさっそく雇用契約書を見せてもらうと、「とりあえずこれを…」と言いながら書類を見せててくれた。
見せてくれるには見せてくれたが、なんか労務関係の手続きがちょっとおかしいと思う。
そもそも、会社側は雇用契約書は事前に私に渡しておくべきで、その書類の内容をもとに私が内定を承諾するかどうかを判断するというのが通常の流れだと思う。
無職期間が長かった私は今回の内定に舞い上がってしまい、雇用契約関係の書類をおざなりにしていた。
私にも落ち度があるにせよ、入社から二日を過ぎても私の手元に契約書がないのはやはりおかしい。
まあ、そこは何かの手違いがあったのかもしれないので目をつぶろう(本当は最も厳密にしないといけないところだが…)
じっくりと内容を確認してみると、そこには試用期間三か月の正職員と記載されていたものの、給与の欄が空白になっていた。
とりあえず正社員であることが分かってホッとしたが、給与欄が空白の雇用契約書なんて見たことがない。
もちろん、求人票にはその記載はあったが、肝心の労働契約書における記載が空白なのはお話にならない。
どういうことか尋ねてみると、給与額はほぼ固まっているが、最終的に社長の承認がいるそうだった。
しかし、社長が出張して不在のため、戻り次第、なるべく早く正式な契約書を作成して渡してくれるということだった。
あぁ~、事前に話をもっと詰めておくべきだった!
ただ、私はここで働きたいし、正社員としての身分も確認できたので、色々な不満はあったものの、抗議だけにとどめて目をつぶることにした。
しかし、それでもまだ、大きな不安が一つ残っていた。
それは、私の上司がいないということだ。これは、ほぼ業界未経験かつ新任の私がいきなりこの事業部の責任者になってしまうということを意味する。
正直、これにはかなり焦った。
一連の事情を全く知らされていなかった私にはまったくの寝耳に水だった。
給料のことにせよ組織体制のことにせよ、訳が分からない。こんないいかげんな組織だったのか?
たしかに私はマネージャー職として入社したのだから、ゆくゆくはそうしたポストに就くことも視野に入れておくべきなのだが、いきなりというのは、いくら何でも乱暴すぎる。
見方を変えればものすごいチャンスではある。しかし、何も知らない男にいきなり務まるような仕事ではない。
とてつもなく大きな不安がよぎってきたが、「大丈夫、私ならできる」と自分を言い聞かせた。
それにしても、雇用契約書の発行が遅れていたり、直属の上司が一週間前に退職していたり、なんとも怪しい雰囲気が漂いだした。
一体この組織はどうなっているのか?
そこで、同期入社の例の人にも様子を聞いてみることにした。こういう時に同期入社がいると心強い。
この人は見た目がクマのようなので、「熊さん」と名付けることにする。
メールで連絡しすると、熊さんもちょうど帰宅するところだったので、昨日の喫茶店で待ち合わせすることにした。
先に店に入って5分ほど待っていると、彼がやってきた。
挨拶も早々に、今日の出来事を熊さんに話してみると、上司がいなかった件は別として、雇用契約書の件は私と同じだった。
たしかに初日の話では、『給与は少なくとも~円以上として決定しているが、どの程度まで上積みできるか検討中』との話は聞いている。
熊さんと話し合った結果、せっかく入社した会社なのだからここは組織を信用して、もう少し待ってみようという話になった。
いつまでたって契約書を渡してもらえないなら職を辞するだけだ。そんないいかげんな職場で勤めていても、後々大変な状況に追い込まれるのは自分だ。
やはり、会社の実情というものは、実際に入社してみないと分からないものだとつくづく感じた。。
どんな中小企業でも、そのあたりはもうちょとしっかりしているものと思っていたが、まさか、この会社がそれに劣るような対応を取るとは想像もしていなかった…
まあでも、熊さんにこのことを相談してよかった。
それにしても、直属の上司の退職を事前に知らせてもらえなかったことは解せない。
後日、この裏事情に至ったとんでもない真相が明らかとなる。
色々と不可解な点があったものの、私はマネージャーとしての仕事に手を付け始めた。まず何から手を付けたかというと…